
強度行動障害と睡眠|眠いのに眠れない子の構造と現場でできること
※本記事は親としての実体験と、支援現場での視点の両方から書いています。
結論:睡眠は「しつけ」ではなく、神経の切り替えの問題
「自閉症 寝ない」「発達障害 寝ない」と夜中に検索している保護者は少なくありません。
重要なのは、「寝ない子」なのではなく、神経が落ちにくい子であるという視点です。
- 入眠困難
- 中途覚醒の多さ
- 早朝覚醒
- 睡眠時間の短さ
睡眠は意志の問題ではありません。神経状態の問題です。
親としての実体験:本当に寝ない子だった
小さい頃、本当に寝ない子でした。
寝てもすぐ起きる。
まるで背中にスイッチが付いているみたいでした。
ずっと抱っこ。置けば泣く。
車で何周もドライブしてようやく寝る。でも家に着いたら起きる。
またドライブ。また抱っこ紐。また歩く。
2時間おきに覚醒。夜中に2時間起きて、また寝る。
親の身体は限界でした。
やれることは全部やった(でも通用しなかった)
- 朝日を浴びせる
- 日中たくさん動かす
- 早めに消灯
- 寝る2時間前にお風呂
- 子守唄
- トントン
- 添い寝
でも通用しなかった。
「早く寝てほしい」という思いが伝わると、逆に興奮する。
空腹では寝ない。寝たい場所でなければ怒る。布団をかけると嫌がる。
でも、満腹直後にニコニコしながら自分から布団に入ることもあった。
ここにヒントがありました。
眠いのに眠れない構造:多動と神経過敏が「減速」を邪魔する
私たちは、何もせずにいる時間の中で自然と眠気が訪れます。
身体がゆるみ、視線が落ち、思考が減速していく。減速の中で眠気はやってきます。
しかし、多動や神経過敏が強い子どもは、この「減速」が起きにくい。
身体は疲れている。目も赤い。あくびも出る。
それでも止まらない。
眠いのに、多動が邪魔をする。
眠気よりも先に、神経の過敏さが動きを生み続ける。結果として、寝たいのに寝られない状態が起きる。
医学・研究の範囲で言えること(断定しない)
自閉スペクトラム症(ASD)の子どもでは、一般児童より睡眠困難の割合が高いという報告があります。
(例:Sleep disturbances in children with Autism Spectrum Disorder, Australian Sleep Association)
① 自律神経(切り替え)の問題
交感神経優位(活動モード)が続くと、身体は休息に入りません。常に軽い戦闘モードになりやすい状態が続きます。
ASDの子どもでは心拍変動(副交感神経活動)の低下など、自律神経の特徴が報告されています。
② メラトニン分泌リズムのズレ
総説では、ASDにおけるメラトニンの分泌量や分泌リズムの特徴が議論されています。
「眠気ホルモンが出る時間がズレる」可能性は、しつけでは説明できません。
③ 感覚過敏
- 布団の圧が嫌
- 音が気になる
- 光が眩しい
- 衣類の感触が不快
これらが積み重なると、「静かな寝室」が神経刺激空間になることがあります。
満腹直後に寝る理由:睡眠は意志ではなく神経状態
満腹になると、副交感神経が優位になりやすい。
安心と満足が同時に来る。
神経が落ちる。
だから寝る。
睡眠は意志ではなく、神経状態です。
睡眠問題が長期化すると何が起きるか
- 日中の易刺激性上昇
- 他害・自傷の閾値低下
- 感覚過敏の増悪
- 情緒不安定
睡眠は単独の問題ではありません。強度行動障害に近づく土台になります。
支援現場でできることはあるのか?(夜を直接変えない、神経を整える)
結論から言うと、睡眠そのものを直接改善することは難しい。
しかし、悪化させないことはできます。
① 減速体験を日中に作る
- 運動後に静の時間
- 圧刺激(トントン・マッサージ)
- 重めクッションで体幹安定
- 無刺激5分間
寝かせるのではなく、減速の練習です。
② 夕方の活動設計
帰宅前20分を静活動にする。
- 光を弱める
- 声量を落とす
- 刺激を減らす
これだけで夜が変わるケースがあります。
③ 血糖調整
夕方の補食内容は重要です。
甘い物だけでは急降下覚醒が起きることもあります。
ここは 空腹と行動の記事 も参考になります。
④ 触覚入力の活用
- 後頭部への一定圧
- 足裏へのゆっくりした刺激
- 一定リズムのトントン
触覚入力は、副交感神経を働かせるきっかけになります。
夜の対応でやってはいけないこと
- 怒る
- 焦る
- 説得する
- 無理に寝かせようとする
- 動画を急に取り上げて感情的になる
特にタブレットを突然止めると、神経は急上昇します。
終了は必ず段階的に。
最終結論
睡眠は躾ではない。
神経の成熟過程である。
そして、徐々に変わる。
焦らないこと。それ自体が最大の介入です。
関連記事(内部リンク)
睡眠は単独の問題ではありません。神経構造の一部です。
前兆、他害、空腹、排泄、すべて連動します。
