
強度行動障害支援で、制度が想定していない仕事
強度行動障害のある人への支援は、
制度上、さまざまな仕組みによって支えられています。
個別支援計画。
支援手順書。
研修修了。
配置基準や加算要件。
これらは、支援の質を一定水準に保つために
重要な役割を果たしています。
一方で、現場では
制度上は明確に位置づけられていない仕事が、
支援の成否を左右している場面があります。
制度が確認しているのは「支援内容」である
制度が確認しているのは、主に次の点です。
- どのような支援を行うか
- 手順が整備されているか
- 記録が残されているか
- 必要な研修を修了しているか
これらはすべて、
支援の「結果」や「形式」に関する確認です。
制度上、
どのように迷い、どの選択をしたか
といった過程は、
明確な確認対象にはなっていません。
個別支援計画に記載されない中核的な行為
現場では、次のような対応が日常的に行われています。
- 今日は活動の切り替えを早める
- 声かけを最小限にする
- あえて深追いしない
- 予定を途中で変更する
これらは、
強度行動障害のある人の状態を踏まえた
重要な対応です。
しかし多くの場合、
これらは個別支援計画に詳細に記載されるものではなく、
現場判断として処理されます。
制度上は、
存在していないかのように扱われる行為です。
研修修了が保証しないもの
強度行動障害支援者養成研修などの研修は、
必要な知識や考え方を学ぶ重要な機会です。
研修修了は、
支援に必要な知識を持っていることを示します。
ただし、研修は
現場での一つ一つの選択を保証するものではありません。
現実の支援では、
マニュアルに収まりきらない場面が連続します。
制度と現場の間には、
この点で必然的なズレが生じます。
事故や逸脱が起きたときだけ現れる問い
通常、制度の中で明確に扱われていない行為が、
事故や逸脱、虐待が疑われる場面になると、
次のような問いとして現れます。
「なぜ、その対応を選んだのか」
「なぜ、もっと早く介入しなかったのか」
ここで初めて、
支援の過程が強く問われます。
普段は制度の外にある行為が、
問題が起きた瞬間にだけ可視化される構造です。
制度が空白にしている領域
ここまで見てきた行為は、
制度上、明確な名称を与えられていません。
現場では、これを
「判断」
と呼ぶことがあります。
・評価されにくい
・共有されにくい
・引き継がれにくい
それでも、
強度行動障害支援の中心を担っています。
行政と現場のあいだで起きていること
ここで強調しておきたいのは、
これは行政や制度設計側の過失を指摘する話ではありません。
制度は、
一定の枠組みを全国的に適用する必要があります。
一方、現場は
個々の状態に即した対応を迫られます。
この二つの役割が異なるため、
制度上、記述しきれない領域が生まれる
それ自体は自然なことです。
問題は、その空白が存在することが
十分に共有されていない点にあります。
制度・現場・親は、別々の視点で同じ支援を見ている
制度は制度の論理で、
現場は現場の感覚で、
親は親の不安と願いで支援を見ています。
どれが正しい、という話ではありません。
ただ、これらの視点が交差しないままでは、
誤解や負担が蓄積されていきます。
この構造を、
親・現場・制度という三つの視点から整理したものが、
以下の固定ページです。
→
強度行動障害は「行動」の問題ではない|親・現場・制度から見えた真因
おわりに
強度行動障害支援では、
制度に記載されていない仕事が
日常的に行われています。
それは、
制度の欠陥というよりも、
制度が担う範囲と現場が担う範囲の違いです。
この違いを理解し、
共有できることが、
持続可能な支援につながります。

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