前兆を見ない支援が、子どもに与えているズレ
「急に行動が出た」
「さっきまで落ち着いていたのに」
「理由が分からない」
放課後等デイサービスの現場で、
よく聞かれる言葉です。
行動が起きたあとだけを見ると、
確かに、
突然の出来事のように見えます。
ですが、
多くの場合、
行動は“いきなり”起きているわけではありません。
その前に、
必ず何らかの変化があります。
表情がこわばる、
視線が合いにくくなる、
動きが落ち着かなくなる、
呼吸が浅くなる。
一つひとつは、
とても小さな変化です。
だからこそ、
見逃されやすい。
支援の現場でよく起きているズレは、
「行動=問題」
という見方
です。
行動が出てから対応する。
落ち着いたら終わり。
この繰り返しでは、
子どもは
「分かってもらえない」
感覚を積み重ねていきます。
特に、
言葉での表現が難しい子どもにとって、
前兆は、
唯一の意思表示
であることも少なくありません。
「しんどい」
「無理」
「今は触れないでほしい」
それを、
行動になるまで待つ支援は、
本人にとってはとても苦しい。
なぜなら、
行動が出て初めて
大人が反応する、
という経験を繰り返すことになるからです。
結果として、
行動の強度が上がるケースもあります。
ここで、
ふきのこの支援の話を、
少し具体的にさせてください。
ふきのこでは、
行動そのものよりも、
行動の手前
を一番大切にしています。
大きな変化ではありません。
・いつもより動きが遅い
・目線が合いにくい
・声かけへの反応が鈍い
そうした、
ほんの小さな違和感を、
毎日、繰り返し見ています。
なぜそこまで見るのか。
それは、
前兆に気づけたとき、
行動を出さずに済むから
です。
気づいた上で、
本人に選択肢を渡す。
「今、どうしたい?」
「少し離れる?」
「休む?」
言葉にならなくても、
指差しや動きで、
自分の意思を出せるように促す。
これが、
落ち着きにつながる理由です。
ふきのこでは、
前兆を捉えるために、
ABC分析を取り入れています。
家庭や学校でも、
行動が起きた前後について、
記録をお願いしています。
・どんな状況だったか
・何が起きる前だったか
・行動のあと、周囲はどう関わったか
一つひとつは、
些細に見える内容です。
ですが、
これを積み重ねることで、
徐々に見えてくるものがあります。
「急に怒った」
「いきなり叩いた」
そう見えていた行動が、
実はそうではなかった、
ということが分かってきます。
前に何があり、
そのとき本人はどんな状態だったのか。
それが共有されることで、
『急に』という言葉は、
ふきのこではほとんど使われなくなります。
前兆は、
行動の直前だけに現れるものではありません。
時間の流れの中で、
少しずつ積み重なっていくこともあります。
例えば、
放課後に機嫌がいい日と、
怒りやすい日がある。
一見すると、
理由が分からないように見えます。
けれど、
学校の連絡帳を振り返ると、
ある共通点が見えてくることがあります。
怒りやすい日は、
学校でパンの日だった。
その子は、
白米は比較的よく食べるけれど、
パンはあまり食べない。
つまり、
本人の中では、
すでに学校の時点で、
しんどさが積み重なっていた、
ということになります。
それが、
放課後になって表に出る。
こうしたことは、
一日では分かりません。
記録を続け、
時間をかけて見ていくからこそ、
「急に怒った」ではなく、
「そうなる理由があった」
に変わっていきます。
問題は、
この関係性ができたあと、
別の場所へ行ったときです。
新しい環境では、
前兆が分からない。
サインも共有されていない。
本人が発している小さなSOSが、
素通りされる。
そうなると、
子どもは別の方法で
伝えようとします。
それが、
行動として表に出る瞬間です。
ここで起きているズレは、
「支援が下手」だからでも、
「本人がわがまま」だからでもありません。
前提となる観察と記録が、
共有されていない
ただ、それだけです。
前兆を見てきた環境から、
そうではない環境へ移る。
本人にとっては、
通じていた言葉が、
突然通じなくなるような感覚です。
その違和感は、
確実にストレスになります。
前兆を見ない支援が、
悪いと言いたいわけではありません。
人員、時間、体制。
すべての現場が、
同じ条件を持っているわけではない。
ただ、
前兆を見るという視点がないまま支援を組み立てると、
ズレは必ず生まれる
という現実があります。
行動が出なくなった、
という結果だけで判断しない。
どんなサインを拾っているのか。
それをどう受け止めてもらっているのか。
この視点が、
支援を選ぶときの、
大切な手がかりになります。
前兆を見てくれる場所では、
子どもは安心します。
安心があるから、
行動を使わずに済む。
その積み重ねが、
安定につながっていきます。
この考え方に共感される方は、
ふきのこの支援方針もご覧ください。

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