家庭で崩れるのはなぜ? 放課後等デイサービスの現場から考える「見通し」の整え方

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家庭でできる「見通し」の整え方

放課後等デイサービスでは落ち着いているのに、
家に帰ると急に不安定になる。

こうした相談は、決して珍しくありません。

「今日はデイでは問題なかったんです」
「学校でも大丈夫と言われています」
それなのに、家では荒れる。癇癪が出る。切り替えられない。

このとき多くの保護者は、
「家では甘えているのかな」
「疲れが出ているだけかも」
そう自分を納得させようとします。

もちろん、疲労が関係していることもあります。
しかし現場から見ると、
それだけでは説明がつかないケースが少なくありません。


家庭で崩れやすい一番の理由は「見通しの差」

放課後等デイサービスでは、
本人が意識しているかどうかに関わらず、
見通しが細かく整えられていることがほとんどです。

次に何をするのか。
どれくらい続くのか。
終わったらどうなるのか。

支援員が言葉で伝え、
環境で示し、
必要に応じて先に予告している。

一方、家庭ではどうでしょうか。

・「ちょっと待ってね」
・「あとでやろう」
・「もうすぐ終わるよ」

悪気があるわけではありません。
むしろ、忙しい中で出る自然な言葉です。

ただ、この抽象的な見通しが、
不安定さを生む大きな原因になることがあります。


見通しが崩れると、子どもの中で起きること

見通しが崩れたとき、
子どもは「わがまま」になっているのではありません。

多くの場合、
次の3つのどれかが起きています。

  • 終わりが見えなくなって不安が増えている
  • 自分の選択が通らないと感じている
  • 言葉の意味が曖昧で、理解が追いつかない

この状態で、さらに大人が急かすと、
子どもは「守り」に入ります。
固まる。逃げる。叩く。叫ぶ。
それは危険を避けるための反応です。

ふきのこの現場でも、
初回利用の時点では「急に荒れた」と見える子ほど、
実際には見通しが崩れる場面が重なっていることが多く見られます。


「分かったつもり」が一番ズレやすい

家庭でよく起きるのは、
「分かっているはず」という前提です。

・毎日同じ流れだから
・何回もやっているから
・前はできていたから

しかし、
見通しは記憶ではなく状態に左右されます。

眠い日。
空腹の日。
学校で緊張が続いた日。

同じ説明でも、
受け取り方はまったく変わります。

現場では、
「分かっているはず」ではなく、
その日の状態に合わせて、毎回見通しを作り直すことを前提にしています。


家庭でできる、具体的な整え方

難しいことをする必要はありません。
ポイントは大きく分けて4つです。

① 抽象語を減らす(「ちょっと」「もうすぐ」をやめる)

「ちょっと」「もうすぐ」「あとで」
これらを、できるだけ具体に変えます。

  • この動画が終わったら
  • タイマーが鳴ったら
  • 3回数えたら
  • この作業を2つやったら

時間・回数・物・行動。
どれか一つに落とすだけで、理解しやすくなります。

ふきのこでは、
「切り替えが苦手」と聞いていた子でも、
回数や終わりを先に見せることで、
落ち着いて次に進める場面が増えることがあります。

② 「終わり」を先に示す(次より先に終わり)

次に何をするか以上に、
「いつ終わるか」が分からないことが不安を強めます。

短いことでも、
「ここまで」「ここでおしまい」を必ずセットで伝えます。

家庭で起こりやすいのは、
本人が「終わった」と思ったところで、
大人が後からタスクを足してしまう場面です。

小さな追加でも、
子どもにとっては終わりが消えた体験になります。

最初に範囲を決め、
追加が必要なら一度終えてから提案する。
それだけで崩れ方は変わります。

③ 「困ったときの合図」を決める(崩れる前の出口)

見通しが崩れ始めたとき、
子どもが一番困るのは、
「どうしたらいいか分からない」ことです。

家庭でも、
困ったときの合図を先に決めておくことができます。

  • 特定の場所に行く=休憩
  • 写真カードを出す=水分
  • 胸に手を当てる=一旦止まる

大人が毎回完璧に読み取れなくても構いません。
大切なのは、
子どもに「出口がある」と伝えることです。

ふきのこでも、
「困ったらここへ行こう」を共有できた子ほど、
行動の爆発が小さくなる傾向があります。

④ 崩れた日を「責める日」にしない(次の修正材料にする)

見通しを整えても、崩れる日はあります。
それは失敗ではありません。

崩れた日は、
「親のせい」「本人のせい」にする日ではなく、
設計を直す日です。

  • どの場面で「分からない」が起きたか
  • どこで終わりが見えなくなったか
  • 言葉が曖昧だったのはどこか

一つ見えるだけで、次は変えられます。


家庭だけで抱えなくていい

正直、家庭で見通しを整え続けるのは簡単ではありません。
家事もある。兄弟もいる。仕事もある。
疲れている日もあります。

ここまで読んで、
「頭では分かるけれど、続けるのは正直しんどい」
そう感じた方もいるかもしれません。

ふきのこでは、
家庭や学校で起きた行動の前後を一緒に整理しながら、
「急に怒った」「急に荒れた」で終わらせない支援を行っています。

常に観察を続けることは、想像以上に大変です。
だからこそ、
一人で抱え続けなくていい。

そう思える場所があることも、
行動を安定させる一つの条件です。


最後に

家庭で見通しを整えることは、
手をかけることでも、
厳しくすることでもありません。

子どもが「次が読める状態」を作ることです。

放課後等デイサービスで落ち着いている理由が、
「相性」や「偶然」ではなく、
設計の結果であることは少なくありません。

「どうして急に崩れたんだろう」
そう思ったときは、叱る前に、
見通しを疑ってみてください。

それは、
子どもを理解しようとする、
とてもまっとうな一歩です。

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