見通しがないと行動が崩れる理由 ― 放課後等デイサービスの現場で一番大切にしていること

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見通しが持てないと、なぜ行動が崩れるのか
── 放課後等デイサービスの現場で「一番効く土台」の話

「前兆に気づくのが大事」
これはよく言われます。
そして、それは本当です。

でも、ふきのこの現場で痛感しているのは、
前兆を読む力と同じくらい、
もっと手前にある土台の存在です。

それが、見通しです。


見通しとは、特別な支援ではありません

見通しとは、難しい技術の話ではありません。

子どもの中で、次のことがある程度わかっている状態です。

  • 次に何が起こるのか
  • どこまでやれば終わるのか
  • 困ったとき、どうすればいいのか

大人から見れば当たり前に思えることでも、
この3つが見えていない子にとっては、
日常そのものが不意打ちの連続になります。

そして不意打ちが続くと、
本人は常に身構えた状態になります。


見通しがない状態は、ずっと「待ち伏せ」されている感覚

見通しが持てない子は、
次に何が起こるか分からないまま、時間を過ごしています。

それは、
廊下の角を曲がるたびに、
誰かが急に飛び出してくるかもしれない状況に近い。

何も起こらない日もある。
でも、起こるかもしれない。
この「分からなさ」だけで、心は削れます。

だから、落ち着いているように見える時間でも、
本人の中では、緊張が溜まり続けています。


「急に怒った」「急に叩いた」は、本当に急なのか

行動が出たあと、よく聞く言葉があります。

「急に怒りました」
「突然でした」
「スイッチが入ったみたいで」

ふきのこの現場では、
この言葉が出たときほど、立ち止まります。

本当に急だったのか。
それとも、
見通しが持てない時間が積み重なっていたのか


抽象的な見通しが、不安を増やす具体例

見通しが崩れる場面で、
現場で本当によく出てくる言葉があります。

「ちょっと待って」
「もうすぐ終わるよ」
「あとでね」

大人にとっては、場をつなぐ便利な言葉です。
でも、見通しが苦手な子にとっては、
この言葉こそが一番不安を強めます。

例えば、こんな場面です。

活動が終わり、帰る準備に入る。
本人は「これをしたら帰る」と理解して動いています。

ところが途中で、
「ちょっと待って」と声をかけられる。

何を待つのかは分からない。
どこまで待てばいいのかも分からない。
ただ、終わりが一旦消える。

さらに時間が経ち、
「もうすぐ終わるよ」と言われる。

でも、その“もうすぐ”が何分なのか、
何をもって終わりなのかは示されていない。

本人の中では、
終わりが近づいたのではなく、
終わりが見えなくなった状態になります。

その状態で、
周囲の動きが変わる。
予定が少しずれる。
さらに待たされる。

我慢は続いています。
でも出口が見えません。

結果として、
耐えていたものが一気にあふれ、行動として出る。

周囲からは「急に」に見える。
でも実際には、
抽象的な見通しが何度も上書きされ、
限界まで耐えていた
だけです。


見通しがあると、前兆は小さくなる

ここが、現場で一番実感しているところです。

見通しがあると、
行動を抑え込まなくても、
前兆そのものが小さくなります。

  • 不意打ちが減る
  • 我慢の総量が減る
  • 切り替えの準備ができる

つまり見通しは、
行動を減らすテクニックではなく、
不安を減らすための設計です。


見通しは「言えば伝わる」ものではありません

「次はこれだよ」
「あと5分だよ」
そう言っているのに伝わらない。

それは、本人の力不足ではありません。

見通しは、
本人が受け取れる形に落とし込まれて、
初めて意味を持ちます。

言葉が効く子もいれば、効かない子もいます。
写真が効く子もいれば、実物が必要な子もいます。

同じ方法が、全員に効くことはありません。


ふきのこが見通しを作るときに大事にしていること

ふきのこでは、見通しを作るとき、
「一般的に正しい方法」では進めません。

  • 写真や実物で、次を具体化する
  • 終わりを先に示す
  • 困ったときの合図を先に決める
  • 同じ言葉・同じ順序で積み上げる

目的は、完璧に理解させることではありません。

分からない時間を減らすことです。


見通しは、子どもを縛るためのものではありません

見通しは、管理のための道具ではありません。


自由に過ごすための土台
です。

次が分からないと、世界は怖い。
怖いと、体が先に守ろうとする。
その結果として行動が出る。

見通しがあると、
怖さが減り、選べる範囲が広がります。

ふきのこが見通しを大事にしているのは、
静かにさせたいからではありません。

本人が安心して、
自分の意思で動ける時間を増やしたいからです。


最後に:見通しが整うと、小3の壁は壁ではなくなる

小3の壁が不安、という相談は多いです。
でも、ふきのこの現場ではこう考えています。

小3の壁は、学年の問題ではありません。
環境の変化に、見通しが追いつかないときに壁になります。

逆に言えば、
見通しを整え続けられる環境では、
壁は低くなります。

前兆に気づくことも大事。
でもその前に、
分からない時間を減らす

これが、行動を小さくする一番現実的な土台です。

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