
▶ 強度行動障害の支援方法
【ケーススタディ】
本記事では、問題行動を防ぐための「先回り支援」が結果として
準備行動を強化してしまった誤学習のケースを紹介します。
誤学習ケース⑦|叩く前に要求が通る学習が形成されたケース(先回り強化)
強度行動障害の支援では、問題行動を未然に防ぐために
前兆段階での対応が重要とされています。
しかしその支援方法によっては、
行動の前兆そのものが強化されてしまう
という誤学習が起きる場合があります。
本ケースでは、
叩く前の行動 → 要求が通る
という経験が繰り返され、
準備行動が強化されていた可能性がありました。
強度行動障害の支援の基本原則については
強度行動障害の支援方法
でも詳しく解説しています。
児童の基本情報
- 年齢:小学4年生
- 診断:自閉スペクトラム症
- 知的特性:中度知的障害
- 言語:単語レベル
- 特性:要求表出が不安定
支援歴
施設利用歴は約1年半。
普段は落ち着いて活動できる場面も多いが、
- 順番待ち
- 活動切り替え
- 好きな遊び終了
などで他害行動が出ることがあった。
環境条件
この日は自由遊びの時間帯で、
児童はブロック遊びをしていた。
支援者はその近くで別児童の対応をしていた。
ケース(何が起きたか)
児童は遊んでいる途中で突然動きを止め、
周囲を見回す様子が見られた。
その後、
- 支援者へ近づく
- 机を軽く叩く
- 声を出す
といった行動が見られた。
支援者は
「叩く前に対応した方が良い」
と考え、
- 好きな玩具を渡す
- 遊びを変更する
といった対応を行った。
すると児童は落ち着き、
行動はその場で止まった。
このパターンはその後も繰り返された。
前兆(行動前の変化)
- 動きが止まる
- 周囲を見回す
- 机を叩く
- 支援者へ接近する
これらは問題行動の前兆として捉えられていた。
ABC分析
A(Antecedent)
- 活動継続
- 要求未充足
B(Behavior)
- 机を叩く
- 支援者へ接近
C(Consequence)
- 要求が通る
- 遊び変更
分析
このケースでは、
問題行動そのものではなく
前兆行動が強化されていた可能性がある。
行動分析では、
行動 → 好ましい結果
が成立すると、
その行動は強化される。
つまり児童の学習としては
机を叩く → 要求が通る
という経験が形成されていた。
これは
先回り強化(preemptive reinforcement)
と呼ばれる誤学習の一種である。
誤学習が起きる理由
支援者は
- 他害を防ぎたい
- 環境を安定させたい
という意図で先回り支援を行っていた。
しかし結果として
準備行動 → 要求が通る
という学習が形成されると、
その行動は繰り返される。
支援の再設計
①適切な要求行動の提示
- 要求カード
- ジェスチャー
②前兆行動の無強化
机叩きなどの行動では
要求を通さない。
③代替行動の強化
適切な要求には
すぐ対応する。
結果
要求カードを導入したことで、
机叩き行動は徐々に減少した。
現在は
- カード提示
- 支援者へ手渡し
といった形で要求を伝える場面が増えている。
このケースから見える支援の視点
- 前兆対応でも誤学習は起きる
- 準備行動が強化される場合がある
- 適切な要求行動を教えることが重要
関連リンク
強度行動障害の支援方法を体系的にまとめています

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