
▶ 強度行動障害の支援方法
【ケーススタディ】
本記事では、発達特性のある児童に見られた行動をもとに、前兆・背景・支援の判断・結果を整理したケーススタディを紹介します。
※個人が特定されないよう、年齢以外の一部情報は抽象化・調整しています。
手首を噛む自傷行動|ストレス負荷の蓄積で起きた強度行動障害ケース
この記事では自傷(噛む行動)の支援事例を通して、強度行動障害の支援方法で重要になるストレス蓄積・前兆理解・環境調整の視点を整理します。
「噛んだ」瞬間だけを見るのではなく、ストレスの蓄積→前兆→行動→結果の流れから整理します。
児童の基本情報(個人特定を避けた概要)
- 年齢:小学4年生
- 診断:自閉スペクトラム症(ASD)
- 知的特性:重度知的障害
- 言語:単語レベルの発語あり
- 感覚特性:身体刺激への反応が強く、強いストレス時に自傷行動が見られる
- 行動特性:ストレスが高まると自分の手首を噛む行動が見られる
支援歴
当施設の利用歴は約1年。利用開始当初から自傷行動(噛む)が見られており、
特に活動が続いた日や刺激が多い日には、帰り際や活動の終盤で行動が出ることが多かった。
支援者の観察では、行動は突然起きるというよりも、
一日の負荷が蓄積したタイミングで起きる傾向があった。
環境条件
この日は放課後活動で、室内では制作活動と遊び活動が並行して行われていた。
児童は制作活動に参加していたが、途中で材料がうまく扱えず、
支援者の手助けを受けながら活動を続けていた。
活動自体は継続できていたが、途中から
- 身体の動きが少なくなる
- 視線が下がる
- 返答が減る
といった変化が見られていた。
ケース(何が起きたか)
制作活動の終盤、支援者が次の作業を促した直後、
児童は突然自分の左手首を口に近づけ、強く噛む行動を示した。
噛む動きは数秒続き、その後手を離したが、
しばらく身体が固まり、視線が床に固定されていた。
支援者が近づくと、再び手首を口元に持っていく動きが見られた。
前兆(行動前の変化)
行動の直前には次の変化が見られていた。
- 視線が下がる
- 動きが止まる
- 手を握る
- 身体が硬くなる
これらは本人の中でストレスや負荷が高まっている際に
見られることがある変化である。
分析(なぜ行動が起きたのか)
このケースでは、制作活動中に失敗が続いたことで
心理的な負荷が徐々に高まっていた可能性がある。
また活動時間が長く、疲労も蓄積していたと考えられる。
その結果、本人の中で処理しきれなくなった負荷が、
手首を噛む自傷行動として表出した可能性がある。
支援の選択肢
- 噛む行動を強く止める
- 叱責する
- 身体を制止する
- 活動負荷を下げる
- 環境刺激を減らす
支援の判断理由
自傷行動は安全面の配慮が必要であるが、
強い制止や叱責は興奮を高めてしまう可能性がある。
そのため今回は、
行動を止めることより、状態を落ち着かせること
を優先した。
実施した支援
- 制作活動を一旦終了
- 静かなスペースへ移動
- 刺激の少ない環境で休憩時間を確保
結果
数分後、身体の緊張が徐々に下がり、
噛む行動は見られなくなった。
その後は座って落ち着いた様子で過ごすことができた。
再発予防
今後は、活動が長く続く場合には途中で休憩を入れ、
ストレスが蓄積しすぎないように活動構造を調整する。
このケースから見える支援の視点
- 行動は突然起きるのではなく負荷の蓄積で起きることがある
- 前兆を捉えることで早期対応が可能になる
- 行動そのものより環境構造を調整する
関連リンク
- 体系的な支援方法:強度行動障害の支援方法
- 施設紹介:ふきのこについて
- ケース一覧:強度行動障害の事例一覧
強度行動障害の支援方法を体系的にまとめています

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