▶ 強度行動障害の支援方法
【ケーススタディ】
本記事では、学習課題をきっかけに見られた他害行動について、
前兆・背景・支援の判断・結果を整理したケーススタディを紹介します。
※個人が特定されないよう一部情報は抽象化しています。
誤学習ケース①|他害で宿題を回避できた経験(小学4年)
放課後等デイサービスでは、宿題や学習課題をきっかけに
他害行動が出現するケースがある。
しかし重要なのは、行動が出た理由だけではない。
その行動の後に何が起きたかが、次の行動を作る。
本ケースでは、結果として
「叩くと宿題が消える」
という誤学習が形成されていた可能性がある。
強度行動障害の支援の基本原則(環境調整・結果操作)については
強度行動障害の支援方法
でも整理しています。
児童の基本情報
- 年齢:小学4年生
- 診断:自閉スペクトラム症
- 知的特性:軽度知的障害
- 言語:会話可能
- 特性:学習課題への抵抗が強い
支援歴
利用歴は約1年。
自由遊びでは安定して活動できるが、
- 宿題
- 計算プリント
- 書字課題
といった学習場面で強い抵抗が見られることがあった。
環境条件
この日は帰所後、
通常通り宿題時間が設定されていた。
支援者が机へプリントを置き、
「宿題をやろう」と声をかけた。
ケース(何が起きたか)
児童はプリントを見ると、
- 顔をしかめる
- 椅子を後ろへ引く
といった反応を示した。
支援者が「少しだけやろう」と声をかけると、
突然近くにいた支援者の腕を叩いた。
支援者は驚き、
- 児童を離す
- 周囲の安全確保
- 宿題を一旦中止
といった対応を行った。
その日は宿題は再開されなかった。
前兆(行動前の変化)
- プリントを見て視線が止まる
- 身体を後ろへ引く
- 机から距離を取る
- 「やりたくない」と小声で言う
これらは学習課題への不安が高まっているサインと考えられる。
ABC分析
A(Antecedent)
- 宿題提示
- 学習開始要求
B(Behavior)
- 支援者を叩く
C(Consequence)
- 宿題中断
- 課題消失
分析
このケースで重要なのは、
行動の後に宿題が消えた
という結果である。
行動分析の視点では、
行動 → 嫌な課題が消える
という結果が繰り返されると、
その行動は強化される。
つまり本人の学習としては、
叩く → 宿題がなくなる
という構造が形成される。
これは
逃避(Escape)による強化
と呼ばれる典型的な行動学習である。
誤学習が起きる理由
支援者は「安全確保」のために宿題を中断した。
これは現場として当然の判断である。
しかし結果として、
- 他害
- 宿題中断
という組み合わせが成立すると、
回避行動として固定される可能性がある。
支援の再設計
誤学習を修正するには、
次の3つの視点が必要になる。
①前兆段階での対応
- プリント量の調整
- 短時間課題
- 成功経験の設定
②代替行動の提示
叩く代わりに、
- 「休憩カード」
- 「手伝って」
といった行動を教える。
③結果操作
重要なのは
叩いても宿題は消えない
という学習を作ること。
一方で、
適切な要求は通る
という経験を積ませる。
結果
課題量の調整と休憩カードの導入により、
叩く行動は徐々に減少した。
現在は
- カード提示
- 短い休憩
といった形で学習活動へ戻ることができる場面が増えている。
このケースから見える支援の視点
- 行動の原因だけでなく結果を見る
- 回避行動は学習されやすい
- 代替行動を教えることが重要
関連リンク
強度行動障害の支援方法を体系的にまとめています

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