誤学習ケース④|押さえるほど強くなる他害行動(制止強化)の支援事例

child
具体的な支援の組み立て方や現場での対応手順については、以下の専門ページで詳しく解説しています。
強度行動障害の支援方法

【ケーススタディ】
本記事では、支援者による身体制止が結果として行動を強化してしまった
誤学習(制止強化)のケースを紹介します。

ホーム
ケーススタディ
誤学習
この記事


誤学習ケース④|押さえるほど強くなる他害行動(制止強化)の支援事例

強度行動障害のある子どもの支援では、危険行動を止めるために身体制止が必要になる場面があります。

しかし、制止の方法や頻度によっては、

押さえるほど行動が強くなる

という現象が起きることがあります。

これは単に「反抗」や「わがまま」ではなく、
行動と結果の学習によって形成される場合があります。

強度行動障害の支援の基本原則については
強度行動障害の支援方法
でも解説しています。


児童の基本情報

  • 年齢:小学5年生
  • 診断:自閉スペクトラム症
  • 知的特性:中度知的障害
  • 言語:単語〜短文レベル
  • 特性:感覚刺激への反応が強い

支援歴

施設利用歴は約2年。

普段は活動参加も可能であるが、

  • 環境刺激が多い場面
  • 活動切り替え
  • 要求が通らない場面

などで他害行動が出現することがあった。

環境条件

この日は自由遊びの時間帯で、
室内には複数の児童が同時に活動していた。

支援者は玩具の片付けと別児童の対応を同時に行っており、
室内には一定の騒がしさがあった。

ケース(何が起きたか)

対象児は床に座り玩具で遊んでいたが、
近くを通った児童の腕を突然叩いた。

支援者はすぐに近づき、
対象児の腕を押さえて行動を止めた。

児童は一度止まったが、
身体を強く動かして制止から抜けようとした。

その際、

  • 腕を振る
  • 足を蹴る
  • 身体を強く反らす

といった動きが見られた。

支援者は安全確保のため、
さらに身体を押さえて制止を続けた。

すると児童は

  • さらに強く暴れる
  • 大声を出す
  • 床へ倒れ込む

といった行動へ発展した。

この状態になると落ち着くまでに
10分以上かかることが多かった。

前兆(行動前の変化)

行動の前には次のような変化が見られていた。

  • 視線が一点に固定
  • 身体の動きが止まる
  • 呼吸が荒くなる
  • 手元の玩具を強く握る

これは刺激処理が難しくなり、
緊張が高まっているサインと考えられる。

ABC分析

A(Antecedent)

  • 室内刺激の増加
  • 他児接近

B(Behavior)

  • 他児を叩く
  • 制止への抵抗

C(Consequence)

  • 身体制止
  • 強い身体接触

分析

このケースでは、
身体制止が単なる安全確保ではなく、
行動の強化要因になっていた可能性がある。

強度行動障害のある子どもの中には、

  • 強い身体刺激
  • 圧迫刺激
  • 身体接触

を強く感じる特性を持つ場合がある。

そのため

暴れる → 強い身体接触が発生

という経験が繰り返されると、
身体抵抗行動が強化されることがある。

また、
制止される状況そのものがストレスとなり、

制止 → 興奮増加 → 行動拡大

という連鎖が形成されることもある。

結果として

押さえるほど行動が強くなる

という状態が生まれる。

支援の再設計

①前兆段階での環境調整

  • 刺激密度を下げる
  • 静かなスペースへ誘導

②制止の最小化

身体制止は安全確保のため必要な場合があるが、

  • 短時間
  • 最小限

にとどめることが重要である。

③代替行動の提示

  • 離れる合図
  • 休憩スペース利用

④結果操作

暴れる行動ではなく、
落ち着いた行動に対して支援を提供する。

結果

環境調整と前兆対応を優先することで、
身体制止が必要になる場面は減少した。

現在は

  • 支援者の誘導
  • 静かな場所への移動

で状態を整えられる場面が増えている。

このケースから見える支援の視点

  • 身体制止が強化要因になる場合がある
  • 行動の結果が学習を作る
  • 前兆対応が最も重要

関連リンク

       強度行動障害の支援方法を体系的にまとめています

       ▶ 強度行動障害の支援方法【構造・前兆・実践まで解説】        

報告する

関連記事一覧

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。