
▶ 強度行動障害の支援方法
【ケーススタディ】
本記事では、支援者による身体制止が結果として行動を強化してしまった
誤学習(制止強化)のケースを紹介します。
誤学習ケース④|押さえるほど強くなる他害行動(制止強化)の支援事例
強度行動障害のある子どもの支援では、危険行動を止めるために身体制止が必要になる場面があります。
しかし、制止の方法や頻度によっては、
押さえるほど行動が強くなる
という現象が起きることがあります。
これは単に「反抗」や「わがまま」ではなく、
行動と結果の学習によって形成される場合があります。
強度行動障害の支援の基本原則については
強度行動障害の支援方法
でも解説しています。
児童の基本情報
- 年齢:小学5年生
- 診断:自閉スペクトラム症
- 知的特性:中度知的障害
- 言語:単語〜短文レベル
- 特性:感覚刺激への反応が強い
支援歴
施設利用歴は約2年。
普段は活動参加も可能であるが、
- 環境刺激が多い場面
- 活動切り替え
- 要求が通らない場面
などで他害行動が出現することがあった。
環境条件
この日は自由遊びの時間帯で、
室内には複数の児童が同時に活動していた。
支援者は玩具の片付けと別児童の対応を同時に行っており、
室内には一定の騒がしさがあった。
ケース(何が起きたか)
対象児は床に座り玩具で遊んでいたが、
近くを通った児童の腕を突然叩いた。
支援者はすぐに近づき、
対象児の腕を押さえて行動を止めた。
児童は一度止まったが、
身体を強く動かして制止から抜けようとした。
その際、
- 腕を振る
- 足を蹴る
- 身体を強く反らす
といった動きが見られた。
支援者は安全確保のため、
さらに身体を押さえて制止を続けた。
すると児童は
- さらに強く暴れる
- 大声を出す
- 床へ倒れ込む
といった行動へ発展した。
この状態になると落ち着くまでに
10分以上かかることが多かった。
前兆(行動前の変化)
行動の前には次のような変化が見られていた。
- 視線が一点に固定
- 身体の動きが止まる
- 呼吸が荒くなる
- 手元の玩具を強く握る
これは刺激処理が難しくなり、
緊張が高まっているサインと考えられる。
ABC分析
A(Antecedent)
- 室内刺激の増加
- 他児接近
B(Behavior)
- 他児を叩く
- 制止への抵抗
C(Consequence)
- 身体制止
- 強い身体接触
分析
このケースでは、
身体制止が単なる安全確保ではなく、
行動の強化要因になっていた可能性がある。
強度行動障害のある子どもの中には、
- 強い身体刺激
- 圧迫刺激
- 身体接触
を強く感じる特性を持つ場合がある。
そのため
暴れる → 強い身体接触が発生
という経験が繰り返されると、
身体抵抗行動が強化されることがある。
また、
制止される状況そのものがストレスとなり、
制止 → 興奮増加 → 行動拡大
という連鎖が形成されることもある。
結果として
押さえるほど行動が強くなる
という状態が生まれる。
支援の再設計
①前兆段階での環境調整
- 刺激密度を下げる
- 静かなスペースへ誘導
②制止の最小化
身体制止は安全確保のため必要な場合があるが、
- 短時間
- 最小限
にとどめることが重要である。
③代替行動の提示
- 離れる合図
- 休憩スペース利用
④結果操作
暴れる行動ではなく、
落ち着いた行動に対して支援を提供する。
結果
環境調整と前兆対応を優先することで、
身体制止が必要になる場面は減少した。
現在は
- 支援者の誘導
- 静かな場所への移動
で状態を整えられる場面が増えている。
このケースから見える支援の視点
- 身体制止が強化要因になる場合がある
- 行動の結果が学習を作る
- 前兆対応が最も重要
関連リンク
強度行動障害の支援方法を体系的にまとめています

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