
▶ 強度行動障害の支援方法
後ろから突然頭突きをする行動|感覚過敏と空間接近が重なった強度行動障害事例(小学4年)
本ケースは、小学4年生の児童に見られた頭突き行動についての事例です。行動自体は突然起こるように見えていましたが、観察を重ねることで前兆や環境要因が明らかになり、支援方法の再設計につながりました。
ケース概要
- 小学4年生
- 自閉スペクトラム症
- 中度知的障害
- 強度行動障害
- 発語は単語レベル
集団活動中、他児の背後に回り込み、突然頭突きをする行動が見られていました。力が強く、相手児童が転倒する危険もあるため、支援者にとって非常に緊張度の高い場面となっていました。
行動が発生した場面
行動は主に待機や説明の時間に発生していました。
ある日の制作活動では、職員が前方で説明を行っている間、児童たちは椅子に座って話を聞いていました。
対象児童は最初は静かに座っていましたが、途中でゆっくりと立ち上がり、前方の児童の背後に移動しました。
そして突然、背中に強く頭突きをする行動が見られました。
この行動は叩く行動とは異なり、体重を乗せて突進するような形で行われるため、衝撃が大きく、周囲の児童も驚きや恐怖を感じる場面となっていました。
見られた前兆
当初は「突然起こる行動」と捉えられていましたが、観察を続けることで一定の前兆が確認されました。
- 特定の児童を凝視する
- 視線が一点に固定される
- 身体の動きが止まる
- 顎を引いて俯く
- 呼吸が浅く速くなる
これらの状態は10〜20秒ほど続くことが多く、その後に行動が発生していました。
初期対応(失敗)
当初は安全確保を優先し、次のような対応を行っていました。
- 頭突きをしたらすぐに制止する
- 「危ない」「やめよう」と注意する
- 椅子へ戻す
- 相手児童から離す
しかし、この対応では行動の頻度は減らず、むしろ次の問題が生じました。
- 行動がより突然になる
- 標的が変わる
- 集団活動への参加が難しくなる
つまり、行動の抑止にはつながっていませんでした。
なぜ支援はうまくいかなかったのか
観察と振り返りを重ねる中で、問題は行動そのものではなく環境条件にある可能性が見えてきました。
特に次の要素が重なっていました。
- 児童同士の距離が近い
- 説明時間が長い
- 他児の細かな動きが視界に入る
- 身体を動かせない状況が続く
対象児童は他児の身体の動きや揺れなどの視覚刺激に敏感な特性があり、刺激が積み重なることで神経的な負荷が高まっていた可能性が考えられました。
行動機能の再分析
この行動は単なる攻撃ではなく、次の機能が考えられました。
- 刺激の遮断
- 感覚状態のリセット
つまり、
刺激が過剰になった状態を止めるための行動
として発生していた可能性が高いと考えられました。
支援の再設計
そこで支援の方針を「行動を止める」から「環境を調整する」方向へ変更しました。
- 座席配置を変更し距離を確保
- 説明時間を短縮
- 説明は個別提示を基本にする
- 待機中は小物操作を許可
- 身体を動かせる待機スペースを設置
また、前兆が見られた場合は活動を中断し、静かな場所へ移動する対応を行いました。
結果
環境調整を行った結果、次の変化が見られました。
- 頭突き行動の頻度が減少
- 前兆段階での対応が可能になった
- 集団活動への参加時間が延びた
行動が完全に消失したわけではありませんが、発生条件が明確になったことで予防的な支援が可能になりました。
まとめ
強度行動障害の支援では、行動だけに注目しても解決しないことが多くあります。
重要なのは、
行動が必要になる環境条件を見直すこと
です。
本ケースでは、環境調整によって神経的負荷を下げることで、行動の頻度を減らすことができました。
強度行動障害の支援では、環境設計と観察に基づく再分析が重要になります。
関連リンク
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