
▶ 強度行動障害の支援方法
誤学習ケース㊽|レジ待ち誤学習(並ぶ場面で問題行動が起きる構造)
スーパーや飲食店などで「レジに並ぶ場面」で問題行動が起きることがあります。
- 並べない
- 床に座る
- 商品を触る
- 走り出す
- 大声を出す
- 順番を抜かそうとする
多くの場合、大人はこう考えます。
「少しぐらい待てばいいのに」
しかし子どもにとってレジ待ちは、かなり難しい場面です。
さらにこの場面では、問題行動が誤学習として形成されやすい条件がそろっています。
問題行動の基本構造については、まず
なぜ問題行動が起きるのか
で整理しています。
レジ待ちという場面の難しさ
レジ待ちは子どもにとって複数の負荷が同時にかかる場面です。
- 何もしない時間が続く
- 順番を守る必要がある
- 動ける範囲が限られる
- 周囲に人が多い
- 商品が目に入る
つまり子どもは次の状態になります。
刺激は多いのに、行動は制限される
この状況は、衝動性のある子どもや強度行動障害のある子どもにとって非常に難しい場面です。
レジ待ち誤学習とは何か
レジ待ち誤学習とは、並んでいる場面で起きた問題行動が、その後の環境変化によって強化され、レジ待ちという状況に結びついて固定していく学習です。
例えば次のような流れです。
- レジに並ぶ
- 待ち時間が発生する
- 子どもが騒ぐ
- 親が順番を譲る/列を離れる
すると子どもは次のことを学習します。
騒ぐと並ばなくて済む
この経験が繰り返されると、レジ待ちのたびに問題行動が起きるようになります。
レジ待ちで起きやすい誤学習
① 逃避強化
最も多いパターンです。
問題行動 → 列から離れる
保護者は周囲の迷惑を気にして、いったん列を離れることがあります。
その結果、子どもは次のことを学習します。
騒ぐと並ばなくて済む
これは典型的な逃避強化です。
② ご褒美強化
レジ前にはお菓子が並んでいることが多くあります。
騒いだときに
- お菓子を買う
- ジュースを渡す
といった対応をすると、次の学習が成立します。
騒ぐ → お菓子がもらえる
これにより問題行動が強化されます。
③ 注目強化
並んでいるときに問題行動が起きると、大人は次のような対応をしやすくなります。
- 「静かにして」
- 「待って」
- 「もう少しだよ」
すると行動は次の結果を得ます。
問題行動 → 大人の関わりが増える
これも行動を強化する要因になります。
ケーススタディ
ある子どもは、レジ待ちになると必ず床に座り込む行動がありました。
最初の頃、保護者は
- 周囲の迷惑が気になる
- 早く会計を終わらせたい
という理由で、順番を譲ることがありました。
すると子どもは次のことを学習しました。
座り込むと順番が早くなる
この経験が繰り返されることで、レジ待ちのたびに同じ行動が起きるようになりました。
なぜ「並ぶ」は難しいのか
並ぶという行動は、子どもにとって意外と複雑です。
- 順番の概念を理解する
- 自分の順番まで待つ
- 動きたい衝動を抑える
- 周囲のルールを守る
つまり並ぶという行動は、
自己調整
が強く求められる行動です。
この力は経験を通して少しずつ育ちます。
よくある対応とその問題
レジ待ちで問題行動が起きたとき、よくある対応は次の通りです。
- 順番を譲る
- 列を離れる
- お菓子を渡す
- 強く叱る
その場は収まることがあります。
しかしこの対応は次の学習を作りやすくなります。
問題行動 → 状況が変わる
つまり問題行動が環境を動かす手段になります。
支援のポイント
① 並ぶ時間を短くする
最初から長い列に並ぶ必要はありません。
- 空いている時間に行く
- セルフレジを使う
- 短い列を選ぶ
成功しやすい条件を作ります。
② 並ぶ行動を練習する
並ぶことは経験を通して学びます。
- 短時間並ぶ
- 成功体験を作る
- 少しずつ時間を伸ばす
この積み重ねが重要です。
③ 待機行動を作る
ただ待つことは難しいため、
- 手をつなぐ
- カゴを持つ
- 商品を持つ
などの役割を作ると安定しやすくなります。
このケースから見えること
レジ待ちの問題行動は、
- 待機ストレス
- 刺激環境
- 誤学習
が重なって起きています。
行動だけを叱っても解決しません。
必要なのは
並べる環境を作ること
です。
関連する記事
問題行動の基本構造については
強度行動障害の支援方法については
強度行動障害の支援方法を体系的にまとめています

コメント