
▶ 強度行動障害の支援方法
【ケーススタディ】
本記事では、支援者の関わりによって結果として行動が強化されてしまった
誤学習のケースを紹介します。
誤学習ケース③|叩くと先生が来る学習が形成された他害(小学2年)
発達障害のある子どもの支援では、支援者の関わり方そのものが
行動を強化してしまうことがあります。
本ケースでは
叩く → 支援者が来る
という経験が繰り返されたことで、
他害行動が注目獲得の手段として学習された可能性がありました。
強度行動障害の支援の基本的な考え方については
強度行動障害の支援方法
でも解説しています。
児童の基本情報
- 年齢:小学2年生
- 診断:自閉スペクトラム症
- 知的特性:軽度知的障害
- 言語:短い会話可能
- 特性:大人との関わりを強く求める
支援歴
施設利用開始から約6か月。
活動参加は可能だが、
- 一人遊びの時間
- 支援者が別児童対応している時間
などでトラブルが見られることがあった。
環境条件
この日は自由遊び時間で、
複数の児童がそれぞれ遊んでいた。
支援者は別の児童の対応をしており、
対象児の近くには大人がいない状況だった。
ケース(何が起きたか)
対象児はブロック遊びをしていたが、
しばらくすると近くの児童の腕を叩いた。
叩かれた児童が驚いて声を上げると、
支援者がすぐに駆け寄った。
支援者は
- 状況確認
- 注意
- 声掛け
を行い、その場の対応をした。
この行動はその後も繰り返された。
前兆(行動前の変化)
- 周囲を見回す
- 支援者の位置を確認する
- 他児へ近づく
- ニヤニヤする表情
行動前には、
支援者の注意を確認するような視線行動が見られていた。
ABC分析
A(Antecedent)
- 支援者が離れている
- 一人遊びの時間
B(Behavior)
- 他児を叩く
C(Consequence)
- 支援者がすぐに来る
- 話しかけられる
- 注意される
分析
このケースでは、
叩く行動そのものよりも
行動の後に何が起きているかが重要である。
行動分析の視点では、
行動 → 注目獲得
という結果が繰り返されると、
その行動は強化される。
つまり児童の学習としては
叩くと先生が来る
という経験が積み重なっていた可能性がある。
これは
注目による強化(attention reinforcement)
と呼ばれる行動学習である。
誤学習が起きる理由
支援者は当然、
- 安全確保
- 状況確認
- 注意
を行う。
しかし結果として
行動 → 大人の関わり
が成立すると、
他害が注目獲得行動として固定される可能性がある。
支援の再設計
①前兆段階での関わり
- 孤立時間を減らす
- 短い声掛けを定期的に行う
②代替行動の提示
叩く代わりに
- 「先生きて」カード
- 呼びかけ行動
を教える。
③結果操作
重要なのは
叩いても注目が得られない
という経験を作ること。
一方で
適切な呼びかけにはすぐ反応する
という経験を積ませる。
結果
呼びかけ行動が定着すると、
叩く頻度は徐々に減少した。
現在は
- 名前を呼ぶ
- 支援者の近くへ来る
といった行動で関わりを求めることが増えている。
このケースから見える支援の視点
- 注意や声掛けも強化子になり得る
- 行動の結果が学習を作る
- 代替行動の設計が重要
関連リンク
強度行動障害の支援方法を体系的にまとめています

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