その行動、読み違えていませんか?|「こだわりが強い」で片づけたとき、支援が止まり始める

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具体的な支援の組み立て方や現場での対応手順については、以下の専門ページで詳しく解説しています。
強度行動障害の支援方法

その行動、読み違えていませんか?|「こだわりが強い」で片づけたとき、支援が止まり始める

「この子はこだわりが強いので」
支援現場でも、ご家庭でも、よく使われる言葉です。

たしかに、いつもの順番に強く反応する。
物の位置が変わると崩れる。
予定変更で強く拒否する。
やり方が少し違うだけで通らない。
同じ流れを何度も求める。

そうした姿を見ると、「こだわりが強い」と表現したくなります。

でも、この言葉は便利すぎます。
便利すぎる言葉は、ときどき支援を止めます。

なぜならそこに、何がその行動を支えているのかを考えなくなる危険があるからです。

不安なのか。
見通しが弱いのか。
感覚的にしんどいのか。
切り替えに大きな負荷がかかっているのか。
それとも、たまたまその形でしか安定を保てないのか。

そこを見ずに「こだわりが強い」で終わると、理解した気になるだけで、支援は前に進みません。

ふきのこでは、目の前の行動を性格や特性の一言で片づけず、神経調整という視点や、支援の全体像を整理した強度行動障害支援方法を土台に、その行動が何を守ろうとしているのかを見ようとしています。

「こだわりが強い」は、説明になっているようで説明になっていません

「この子はこだわりが強い」
この言葉を使うと、一見その子の特性を理解したように見えます。

ですが実際には、多くの場合それは説明ではありません。
ただ名前をつけただけです。

たとえば、

  • なぜその順番でないと苦しいのか
  • なぜその物の位置が変わると崩れるのか
  • なぜ変更に耐えにくいのか
  • なぜ今それを強く求めているのか

こうした問いに答えられないまま「こだわり」と呼んでいるなら、まだ何も読めていません。

本当に必要なのは、ラベルではなく構造です。

「こだわり」に見えて、実は別のものが動いていることがあります

同じように見える行動でも、中で起きていることは全く違う場合があります。

たとえば、

  • 不安が強く、予測できる形にしがみついている
  • 感覚的なしんどさがあり、慣れた流れ以外を受け入れにくい
  • 情報処理に負荷がかかり、変化に対応する余力がない
  • 過去にそのやり方で通った経験が積み重なっている
  • 自分を保つために、繰り返しや固定化が必要になっている

どれも外から見ると「こだわり」に見えるかもしれません。
でも支援の組み立て方は全部変わります。

ここを分けずに一括で「こだわり」とすると、支援が雑になります。

よくある読み違い

たとえばこんな場面です。

いつもの道でないと強く拒否する。
並べ方が少し違うだけでやり直そうとする。
予定が変わると一気に不安定になる。
決まった順番でないと先に進めない。
同じ確認を何度も求める。

このとき周囲は、ついこう考えます。

  • 融通がきかない
  • こだわりが強い
  • 自分のやり方を通したいだけ
  • いつもこうだから仕方ない

ですが、実際にはそう単純ではありません。

その順番でないと理解が追いつかないのかもしれません。
変化に耐えるだけの余裕がもう少ないのかもしれません。
見通しが崩れて、一気に不安が上がっているのかもしれません。
いつも通りであること自体が、本人の安定装置になっているのかもしれません。

つまり、問題は「こだわり」そのものではなく、それが必要になっている背景です。

支援が止まるのは、「こだわり」と言ったところで思考が止まるからです

本当に危ないのは、行動そのものではありません。
理解したつもりになることです。

「この子はこだわりが強いから」
この言葉が出た瞬間に、

  • なぜそうなるのかを考えなくなる
  • 条件調整より説得を増やす
  • 背景より態度を見るようになる
  • 本人のしんどさより周囲の困り感が中心になる

ということが起きやすくなります。

すると支援は、「変えさせる」「慣れさせる」「譲らせる」という方向へ寄っていきます。
でも、背景を読まずにそこだけ動かしても、多くはうまくいきません。

似たことは、「できるのにやらない」と見えたときの読み違いでも起きます。表に見えている行動だけで意味づけすると、支援は本人理解から離れていきます。

「やめさせる」より先に、「何を守っているのか」を見た方がいい

こういうときに先に考えるべきなのは、どうやってその行動をなくすかではありません。

先に見るべきなのは、その行動が何を守っているのかです。

たとえば、

  • 予測可能性を守っている
  • 不安の上がりすぎを防いでいる
  • 感覚的なしんどさから自分を守っている
  • 混乱しないための順序を保っている
  • 崩れないための最低限の安定を作っている

もしそうだとしたら、そこを無理に剥がすだけでは危険です。

支援は、行動の表面を消すことではありません。
その行動が担っている役割を理解した上で、別の支え方を作れるかどうかです。

「変更に弱い」のではなく、変更を支える条件が足りていないこともあります

変更や切り替えに強く反応する子を見ると、「変化に弱い子」とまとめられがちです。

でも、ここも丁寧に見た方がいいところです。

変更そのものが問題なのではなく、

  • 事前予告がなかった
  • 何に変わるかが見えていなかった
  • 変化後の着地点が分からなかった
  • その時点ですでに余裕が少なかった
  • 変更を受け止めるための支えが足りなかった

ということも少なくありません。

つまり、「変化に弱い」と言う前に、変化を支える設計があったかを見なければいけません。

このあたりは、神経調整という考え方とも深くつながっています。変化に耐えられるかどうかは、気合いや性格ではなく、その時の神経の余白に大きく左右されるからです。

「こだわりを減らす」こと自体を目的にしない方がいい

支援でありがちなのは、「こだわりを減らすこと」が目標になってしまうことです。

ですが、それはかなり危うい考え方です。

もちろん、生活が極端に制限されていたり、本人や周囲の安全に影響していたりするなら、調整は必要です。

ただしそれでも、目標は「こだわりを消すこと」ではありません。

目標は、

  • 本人がより無理なく過ごせること
  • 崩れずに切り替えられる範囲を少しずつ増やすこと
  • 安心の支えを一つの形だけに固定しすぎないこと
  • 周囲が読み違えずに支えられること

です。

ここを外すと、本人の安定を支えていたものだけを奪ってしまい、かえって不安定になります。

「慣れれば大丈夫」と雑に進めると悪化することがあります

ここもよくあるズレです。

「最初は嫌がっても、そのうち慣れる」
「変えていかないと余計にこだわる」
「甘やかすと固定する」

こうした考えが、いつも間違いとは言いません。
ですが、条件を見ずにやると危険です。

本人に余裕がない。
変化の支えがない。
理解の補助が足りない。
不安が高い。
そういう状態で「慣れさせる」を進めると、学習されるのは適応ではなく失敗と恐怖です。

支援がやるべきなのは、無理に慣れさせることではなく、慣れられる条件を先に作ることです。

ふきのこで大事にしている見方

ふきのこでは、「こだわりがあるかどうか」だけを見ません。
その行動が、

  • いつ強く出るのか
  • 何が変わると崩れるのか
  • どの支えがあれば通りやすいのか
  • どこまでなら変化を受け入れられるのか
  • その日の状態によって何が違うのか

を見ます。

つまり、固定した特性として扱うのではなく、条件との関係で見ます。

そうすると、「この子はこだわりが強い」で終わらずに、
「この条件だと苦しい」
「この支えがあると通りやすい」
「ここまでは動かせる」
という読みが少しずつできるようになります。

それが支援です。

保護者の方へ

家でも、「この子はこだわりが強い」と感じる場面はあると思います。

ですがその時、少しだけ見方を変えると、違うものが見えてくることがあります。

本当に自分のやり方を通したいだけなのか。
変わることがしんどいのか。
不安が上がっているのか。
いつも通りでないと崩れやすい状態なのか。

そこが見えてくると、ただ言い聞かせたり、我慢させたりするだけでは届かない理由も見えてきます。

必要なのは、「こだわりがある子」と決めることではありません。
何がこの子をそこまでその形に向かわせているのかを一緒に考えることです。

まとめ

「こだわりが強い」
この言葉は便利です。

でも便利な言葉は、ときどき思考を止めます。

本当に見るべきなのは、

  • 何がその行動を必要にしているのか
  • 何を守ろうとしているのか
  • どんな条件なら少し通りやすくなるのか
  • どこで無理が起きているのか

です。

「こだわりが強い」で片づけた瞬間、支援は止まり始めます。
逆に、その背景を読み始めたところから、支援はやっと動き出します。

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       ▶ 強度行動障害の支援方法【構造・前兆・実践まで解説】        

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