
▶ 強度行動障害の支援方法
【誤学習ケース】
本記事では、強度行動障害の支援現場で起きやすい「誤学習(支援が行動を強化してしまう)」を、行動分析の視点から解説します。
問題行動の背景には、行動の直後に起きる結果(強化)が大きく影響しています。
誤学習ケース⑫|説明・説得が問題行動を強化する構造(強度行動障害)
支援現場では、問題行動が起きたときに次のような対応がよく見られます。
- 「どうしてそんなことするの?」
- 「それはダメだよ。危ないよ。」
- 「叩いたら相手が痛いでしょ?」
- 「ちゃんと考えて行動しよう。」
支援者としては当然の関わりに見えます。しかし状況によっては、この説明や説得そのものが問題行動を強化することがあります。
誤学習とは何か
誤学習とは、支援者の意図とは逆に、問題行動が「得をする行動」として学習されてしまう状態です。
行動分析では、行動は次の流れで理解されます。
A(状況) → B(行動) → C(結果)
問題行動の直後に起きるC(結果)が報酬として働くと、その行動は繰り返されやすくなります。
説明・説得が強化になる構造
問題行動の直後に説明や説得が行われると、次の学習が成立することがあります。
問題行動 → 大人が長く関わる → 注目が増える → 行動が強化
つまり子ども側には
「行動すると大人が長く関わってくれる」
という学習が成立してしまうことがあります。
現場でよくある場面
他害行動
叩いた直後に
- 「どうして叩いたの?」
- 「叩いたらダメでしょ」
- 「相手が痛いでしょ」
と説明が続く。
その間、子どもは大人の注意を強く受け続けます。
物投げ
物を投げた直後に
- 「投げたら危ないでしょ」
- 「壊れたらどうするの」
- 「ちゃんと使わないとダメ」
と説明が長く続く。
結果として
問題行動 → 大人が長く関わる
という構造が成立してしまうことがあります。
なぜ説明が逆効果になるのか
① 興奮状態では言語処理が難しい
問題行動が起きている瞬間は、子どもの興奮レベルが高くなっていることが多く、言葉による説明は十分に処理されないことがあります。
そのため、説明は理解される情報ではなく刺激として増えてしまいます。
② 注目が強化になる
強度行動障害の支援では、
大人の注目そのものが強化子
になることがあります。
説明が長いほど、大人の関わりが増え、行動が維持される可能性があります。
③ 行動の結果として成立する
説明が問題行動の直後に繰り返されると、子ども側には
問題行動 → 大人が関わる
という結果が学習されます。
この誤学習の前兆
説明による誤学習が進むと、次のような行動が見られることがあります。
- 問題行動の直後に大人の顔を見る
- 同じ行動を繰り返す
- 大人の反応を確認する
- 関わりが減ると再び行動する
これは注目強化が働いているサインの可能性があります。
支援の修正方法
① 行動の最中は説明を減らす
問題行動の最中は、長い説明よりも
- 短い指示
- 環境調整
- 距離の確保
などの対応が優先されます。
② 落ち着いてから伝える
説明や振り返りは、興奮が落ち着いたあとに行う方が効果的です。
このタイミングであれば、言葉の理解が進みやすくなります。
③ 適切行動を強化する
問題行動ではなく、次のような行動を強化します。
- 言葉で伝える
- 支援者に近づく
- カードを使う
こうした行動が成立すると、問題行動は減りやすくなります。
まとめ
強度行動障害の支援では、
行動の理由よりも、行動の後に何が起きているか
を見ることが重要です。
問題行動の直後に説明や説得が続くと、行動が強化されることがあります。
支援では
- 刺激を減らす
- 環境を整える
- 適切行動を強化する
といった対応が重要になります。
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