▶ 強度行動障害の支援方法
【ケーススタディ】
本記事では、発達特性のある児童に見られた行動をもとに、前兆・背景・支援の判断・結果を整理したケーススタディを紹介します。
※個人が特定されないよう、一部の情報は抽象化しています。
予定変更で叩く行動|他害の支援事例(小学5年生・発達障害)
この記事では「他害(叩く行動)」の支援事例を通して、強度行動障害の支援方法で重要になる予測可能性と環境調整の視点を整理します。
「叩いた」という行動だけを見るのではなく、前兆→分析→判断→支援→結果→再発予防までを現場の視点で整理します。
児童の基本情報(個人特定を避けた概要)
- 年齢:小学5年生
- 診断:自閉スペクトラム症(ASD)
- 知的特性:中度知的障害
- 言語:簡単な会話は可能だが、感情や不安を言語化することは難しい
- 感覚特性:人の動きや声の多い環境で不安が高まりやすい
- 行動特性:予定変更や見通しの崩れがあると、強い不安や混乱が生じやすい
支援歴
当施設の利用歴は約1年。活動には比較的安定して参加できるが、予定が変わる場面では混乱が見られることがあった。
特に「楽しみにしていた活動」が変更される場合、不安が急激に高まりやすく、身体緊張や興奮が見られる傾向がある。
環境条件
この日は屋外活動(公園遊び)を予定していたが、急な雨により室内活動へ変更することになった。
支援者が説明を行ったが、児童は窓の外を何度も確認し、公園へ行くことを期待している様子が見られた。
ケース(何が起きたか)
支援者が「今日は雨だから公園は行けない」と伝えた直後、児童は表情が固まり、その場で立ち尽くす様子が見られた。
その後、近くにいた児童の肩を強く叩く行動が見られた。
叩かれた児童に大きな怪我はなかったが、周囲の児童が驚き、室内の動きや声が増える場面となった。
前兆(行動前の変化)
行動が起きる直前、次のような変化が見られていた。
- 窓の外を何度も確認する
- その場で立ち止まり動きが止まる
- 呼びかけへの反応が遅くなる
- 肩や腕に力が入り身体が固くなる
- 床を強く踏む、足踏みをする
- 視線が一点に固定される
この段階は、予定変更による予測の崩れが起き、不安が高まり始めている状態と考えられる。
分析(なぜ行動が起きたのか)
今回の行動の主な要因は、予定変更による見通しの崩れと考えられる。
児童は公園へ行くことを期待していたが、その予定が突然変更されたことで、不安と混乱が急激に高まった可能性がある。
また、叩いた相手は特定の対象というよりも、近くにいた児童であり、攻撃意図よりも状態の崩れによる反応として現れた可能性が高い。
このケースでは「叩く行動」そのものよりも、予測可能性が失われた瞬間に状態が崩れたことが重要なポイントと考えられる。
支援の選択肢
- 叱責して行動を止める
- 身体を強く制止する
- 要求を受け入れて公園へ行く
- 予定変更を視覚的に示し、次の見通しを提示する
支援の判断理由(なぜそれを選んだか/選ばなかったか)
叱責や強い制止は一時的に止まる可能性があるが、不安が高い状態では刺激を増やす結果になりやすい。
また予定を戻して公園へ行くことは、その場では落ち着く可能性があるが、現実的ではない場合も多い。
そのため今回は、予定変更を視覚的に整理し、次に何が起こるかを明確にすることで、予測可能性を回復させる支援を選択した。
実施した支援
- 叩かれた児童を安全な位置へ移動し距離を確保
- 落ち着いた声で短い言葉で状況を説明
- 活動予定をホワイトボードで視覚化
- 代替活動(室内遊び)を具体的に提示
- 活動の順番を示し見通しを作る
結果
視覚的に予定を示したことで、児童はホワイトボードを見ながら状況を理解する様子が見られた。
その後は叩く行動は見られず、室内活動へ参加することができた。
再発予防(次回対応)
予定変更が起こる可能性がある日は、あらかじめ「変更の可能性」を伝えることが重要と考えられる。
また予定を視覚的に示すことで、予測可能性を高め、不安の高まりを防ぐことができる。
このケースから見える支援の視点
- 予定変更は強い不安を引き起こすことがある
- 行動の背景には予測可能性の崩れが関係する場合がある
- 視覚的な見通しの提示が有効な支援となることがある
関連リンク
- 体系的な支援方法:強度行動障害の支援方法
- 事例一覧:強度行動障害の事例・ケーススタディ
強度行動障害の支援方法を体系的にまとめています

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