
▶ 強度行動障害の支援方法
【ケーススタディ】
本記事では、問題行動を止める目的で与えた「ご褒美」が結果として行動を強化してしまった
誤学習(ご褒美強化)のケースを紹介します。
誤学習ケース⑥|叩くとお菓子が出る学習が形成されたケース(ご褒美強化)
強度行動障害のある子どもの支援では、行動を止めるために
- お菓子
- タブレット
- 好きな遊び
などを提示することがあります。
しかしその方法が繰り返されると、
問題行動 → ご褒美
という学習が形成される場合があります。
このケースでは、
叩くとお菓子が出る
という誤学習が形成されていた可能性がありました。
強度行動障害の支援の基本原則については
強度行動障害の支援方法
でも解説しています。
児童の基本情報
- 年齢:小学3年生
- 診断:自閉スペクトラム症
- 知的特性:中度知的障害
- 言語:単語レベル
- 特性:食べ物への興味が強い
支援歴
施設利用歴は約1年。
普段の活動では比較的安定しているが、
- 疲労
- 活動切り替え
- 刺激の多い環境
などで他害行動が出ることがあった。
環境条件
この日は自由遊び時間で、
複数の児童がそれぞれ遊んでいた。
室内では
- ブロック遊び
- ボール遊び
- 制作活動
が同時に行われていた。
ケース(何が起きたか)
対象児はブロック遊びをしていたが、
突然近くにいた児童の腕を叩いた。
叩かれた児童が泣き出し、
支援者がすぐに対応した。
対象児は興奮状態になり、
- さらに叩こうとする
- 大声を出す
といった様子が見られた。
支援者はその場を落ち着かせるため、
「これ食べる?」
と言って小さなお菓子を提示した。
すると児童は行動を止め、
お菓子を受け取って落ち着いた。
この対応はその後も数回行われた。
前兆(行動前の変化)
- 周囲を見回す
- 落ち着きがなくなる
- 手元の物を強く握る
- 他児へ接近する
これは緊張や刺激負荷が高まっているサインと考えられる。
ABC分析
A(Antecedent)
- 刺激の多い環境
- 他児接近
B(Behavior)
- 他児を叩く
C(Consequence)
- お菓子が出る
- 支援者の関わり
分析
行動分析の視点では、
行動の後に好ましい結果が起きると、
その行動は強化される。
本ケースでは
叩く → お菓子
という結果が成立していた。
つまり児童の学習としては
叩くと好きなものが出る
という経験が形成されていた可能性がある。
誤学習が起きる理由
支援者としては
- 早く落ち着かせたい
- 周囲への影響を減らしたい
という意図があった。
しかし結果として
問題行動 → 報酬
という構造が成立すると、
行動は学習されてしまう。
支援の再設計
①前兆段階の対応
- 早めの声掛け
- 活動切り替え
②代替行動の提示
- 「休憩」カード
- 「おやつ」要求
③結果操作
重要なのは
叩いてもお菓子は出ない
という経験を作ること。
一方で
適切な要求には報酬が出る
という学習を作る。
結果
要求カードを導入したことで、
叩く行動は徐々に減少した。
現在は
- おやつカード
- 休憩カード
を使用する場面が増えている。
このケースから見える支援の視点
- 問題行動の後の報酬は行動を強化する
- 落ち着かせる目的でも誤学習が起きる
- 代替行動の設計が重要
関連リンク
強度行動障害の支援方法を体系的にまとめています

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