
▶ 強度行動障害の支援方法
誤学習ケース㉕|支援者ごとに対応が違うと問題行動が固定する構造
強度行動障害の支援現場では、支援者ごとに対応が違うことで
問題行動が固定してしまうケースが少なくありません。
一見すると小さな違いに見えますが、
行動分析の視点ではこれは非常に大きな問題になります。
問題行動の基本構造については
問題行動はなぜ起きるのか|トリガー→前兆→行動→誤学習の構造
でも解説しています。
また、問題行動の前に見られる変化については
強度行動障害の前兆サイン20
も参考になります。
現場で起きていた状況
対象となる児童は小学4年生。
自閉スペクトラム症と知的障害があり、
強度行動障害の特性が見られる子どもでした。
活動の切り替え場面で、次のような行動が見られていました。
- 机を叩く
- 大声を出す
- 床に寝転ぶ
しかし観察を進めると、この行動は
特定の支援者のときだけ
強く出ていました。
具体的には次のような違いがありました。
- A支援者 → 行動が出ると活動を延長する
- B支援者 → 行動が出ても予定通り終了する
- C支援者 → 説明して説得する
つまり
支援の基準が統一されていない
状態でした。
子ども側から見えている世界
この状況を子どもの視点で考えると、
次のような学習が起きます。
- A先生 → 行動すると延長できる
- B先生 → 行動しても意味がない
- C先生 → 説明が続く
つまり子どもは
「誰に対して行動すればいいか」
を学習していきます。
これは行動分析でいう
弁別刺激(Discriminative Stimulus)
の学習です。
弁別刺激とは何か
弁別刺激とは、
「この状況では行動すると結果が変わる」
というサインのことです。
今回のケースでは、
- 特定の支援者
- 特定の活動終了場面
が弁別刺激として機能しています。
つまり子どもは
人を見て行動を変えている
という状態です。
似た構造は
誤学習ケース⑱|止めてくれる人を選ぶ構造
でも見られます。
刺激統制の崩壊
本来、支援は
刺激統制
のもとで行われる必要があります。
- どの支援者でも同じルール
- どの場面でも同じ対応
- 同じ行動には同じ結果
しかし支援者ごとに対応が違うと、
この刺激統制が崩れてしまいます。
その結果、子どもは
- 人を選ぶ
- 状況を試す
- 行動を強くする
ようになります。
これは
誤学習ケース⑯|止める支援が行動を強くする構造
とも関連する問題です。
支援の整合性(Treatment Integrity)
行動支援の研究では、
支援が機能するかどうかは
支援の整合性(Treatment Integrity)
に大きく左右されることが知られています。
これは
- 決めた支援を
- 決めた通りに
- 全員が
- 同じように行う
という意味です。
この整合性が崩れると、
どんな支援計画も効果が出なくなります。
現場で特に起きやすい場面
- ゲーム終了
- タブレット終了
- 外遊び終了
- 帰宅準備
- おやつ終了
つまり
活動の終わり
です。
終わりの場面では
- 延長してしまう支援者
- きっぱり終わる支援者
が混在しやすく、
誤学習が生まれやすくなります。
まとめ
支援者ごとに対応が違うと、
子どもは
- 人を見て行動を変える
- 強い行動を試す
- 問題行動を固定する
という学習をしていきます。
問題行動を減らすためには、
子どもを変える前に
支援の構造
を整えることが重要です。
誤学習の全体構造については
強度行動障害で起きる誤学習8パターン
の記事も参考にしてください。
強度行動障害の支援方法を体系的にまとめています

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