車の中から靴を投げるケース|送迎中に見られた投擲行動の支援事例

disability
具体的な支援の組み立て方や現場での対応手順については、以下の専門ページで詳しく解説しています。
強度行動障害の支援方法

車の中から靴を投げるケース|送迎中に見られた投擲行動の支援事例

強度行動障害のある子どもの支援では、施設内だけでなく送迎中にもさまざまな行動が見られます。
特に送迎車内は、限られた空間の中で環境刺激や身体的負荷が重なりやすく、
行動が急に変化する場面が少なくありません。

ここでは、実際の送迎場面で見られた「車の中から靴を投げる行動」のケースを紹介します。
強度行動障害の支援の基本的な考え方については
強度行動障害の支援方法
でも解説しています。

送迎車内で起きた状況

その日は放課後の送迎時間で、子どもたちは順番に自宅へ送る予定でした。
対象となる児童は小学校4年生で、強度行動障害の特性があり、
環境の変化や音刺激に敏感な様子が見られる子どもでした。

児童は送迎車の後部座席に座り、シートベルトを着用していました。
最初の数分は特に問題なく、窓の外を見たり、手元を触ったりしながら静かに座っていました。

しかし車が幹線道路に入り、交通量が増え始めた頃から、
児童は足元を触る動きが増えていきました。

靴のかかとを床にこすりつけるような動きや、
足先で靴を押すような動作が見られました。

この段階ではまだ大きな行動は見られませんでしたが、
手足の動きが増え、体が落ち着かない様子が見られていました。

靴を脱ぐ行動

しばらくすると、児童は片方の足をシートの上に上げ、
靴のかかとを引っ掛けるようにして靴を脱ぎ始めました。

支援者が「靴は履いておこうね」と声をかけましたが、
児童は足元を見たまま靴を完全に脱ぎ、
手に持ったまましばらく動きを止めました。

このとき児童の視線は靴に向けられ、
手に持った靴をゆっくりと回すような動きが見られました。

その直後、児童は窓の方向へ手を振り、
靴を外へ投げました。

靴は道路脇の歩道に落ち、送迎車はそのまま進行する状況となりました。

投擲行動の連鎖

靴を投げた後、児童はもう片方の靴にも手を伸ばし、
同じように脱ぎ始めました。

支援者が後部座席に体を向け、
「靴は投げないよ」と声をかけましたが、
児童は視線を合わせることなく靴を手に取り、
再び窓の方向へ振り上げる動きが見られました。

この時点で支援者は、
次の投擲を防ぐため距離を取りながら状況を観察する対応を取りました。

数秒後、児童は靴を投げることなく
そのまま手に持ったまま座席に寄りかかり、
窓の外を見始めました。

前兆として見られた行動

このケースでは、投擲行動の前にいくつかの変化が見られていました。

  • 足元を触る動きが増える
  • 靴を床にこする
  • 座席の上に足を上げる
  • 靴を手で回す

これらの動作は、行動が大きく変化する前に見られる
身体的な緊張や落ち着かなさのサインであった可能性があります。

ABC分析による整理

このケースを行動分析の視点から整理すると、次のような連鎖が考えられます。

先行事象(A)

  • 交通量の増加による音刺激
  • 車内という閉鎖空間
  • 長時間座り続ける身体的負荷
  • 靴への触覚刺激

行動(B)

  • 靴をこする
  • 靴を脱ぐ
  • 靴を持つ
  • 窓の外へ投げる

結果(C)

  • 刺激の発散
  • 環境の変化
  • 支援者の注意

このように見ると、靴を投げる行動は突然起きたものではなく、
身体的緊張の高まりの中で段階的に進行していたことが分かります。

神経負荷の視点

送迎車内では、

  • エンジン音
  • 車の振動
  • 交通音
  • 空間の制限

といった複数の刺激が同時に存在します。

強度行動障害のある子どもでは、
こうした刺激が積み重なることで神経負荷が高まり、
行動として表出することがあります。

靴を触る行動は、その負荷を調整するための
自己刺激行動の一部であった可能性も考えられます。

支援現場で考えたい視点

送迎場面では、行動が起きた瞬間に

  • すぐに止める
  • 声をかける
  • 距離を取る

といった判断が求められます。

しかしこのケースでは、投擲行動の前に
複数の前兆が見られていました。

こうした前兆に気づくことで、
行動が拡大する前に環境調整や対応を検討することも可能になります。

ふきのこの支援の考え方については
ふきのこについて
でも紹介しています。

       強度行動障害の支援方法を体系的にまとめています

       ▶ 強度行動障害の支援方法【構造・前兆・実践まで解説】        

報告する

関連記事一覧

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。