
▶ 強度行動障害の支援方法
その行動、読み違えていませんか?|支援者が変わると崩れる子を、わがままと見ないために
子どもの支援をしていると、
「この支援者の時は比較的落ち着いているのに、別の支援者に変わると急に不安定になる」
という場面があります。
たとえば、
- 担当が変わると急に表情が固くなる
- いつもの職員がいない日に崩れやすい
- 声をかける人が変わると動けなくなる
- 送迎の職員が違うと強く不安定になる
- 関わる大人が変わるだけで他害や拒否が増える
こうした姿を見ると、
周囲はつい
「人を選んでいるのではないか」
「お気に入りの人じゃないと嫌なのではないか」
「甘えているのではないか」
「わがままなのではないか」
と考えやすくなります。
でも、ふきのこでは、支援者が変わると崩れる子を、わがままとは見ません。
なぜなら、
その背景には、
単なる好き嫌いではなく、
安心の土台が人との関係の中に強く結びついていることや、
関わり方の違いがその子の負荷に直結していることが少なくないからです。
つまり、
「人を選んでいる」のではなく、
その子が支えとして使っていた条件が変わった
ことで崩れているのかもしれません。
だから、この見え方もかなり読み違えやすい。
そして読み違えるほど、
支援はその子の不安を「直すべきわがまま」として扱いやすくなります。
「人が変わると崩れる」は、好き嫌いの話だけではありません
大人から見ると、
特定の支援者の時だけ安定している子は、
どうしても
「人を選んでいる」
ように見えやすいです。
もちろん、
相性のようなものが全くないわけではありません。
人との相互作用の中で、
入りやすい人、
緊張しやすい人がいるのは自然なことです。
でも、そこで思考を止めると危ないです。
本当に見たいのは、
「誰が好きか」ではなく、
- 何がその子を安心させていたのか
- どの関わり方なら入りやすいのか
- 何が変わると負荷になるのか
- どのズレで崩れやすくなるのか
だからです。
つまり、
支援者が変わると崩れるのは、
人への執着というより、
人を通して条件の違いに強く反応している
のかもしれません。
ふきのこが見ているのは「誰が好きか」ではなく「何が違ったか」です
ふきのこでは、
支援者が変わった時に子どもが崩れたら、
まず
「この人が嫌だったのかな」
とは考えません。
それよりも、
- 声量が違ったのか
- 言葉数が違ったのか
- 待ち方が違ったのか
- 距離の詰め方が違ったのか
- 視線の向け方が違ったのか
- 手伝うタイミングが違ったのか
- 終わりの示し方が違ったのか
を見ます。
つまり、
「人の違い」を、
感覚的な好き嫌いではなく、
支援条件の違い
として分解して見ます。
同じ優しい声かけでも、
ある支援者の間の取り方なら入る。
別の支援者の速さだと重くなる。
同じ促しでも、
ある人の距離感なら安心できる。
別の人の近づき方だと圧になる。
こういうことは実際にかなりあります。
なぜ子どもは、支援者が変わると崩れるのか
1. その子にとっての「安心の型」が崩れるからです
子どもの中には、
特定の支援者とのやり取りの中で、
少しずつ安心の型を作っている子がいます。
たとえば、
- この人は急に詰めてこない
- この人は待ってくれる
- この人は言葉が少ない
- この人は自分のペースを壊しにくい
といったことが積み重なり、
その子にとっての安全条件になっていることがあります。
支援者が変わると、
その条件が一気に変わります。
だから崩れるのは、
人に執着しているのではなく、
安心の前提が崩れた
からかもしれません。
2. 関わりの微差が、その子には大きな差になるからです
大人から見ると小さな違いでも、
子どもにはかなり大きいことがあります。
たとえば、
- 一言多い
- 待つ時間が短い
- 近づく速度が速い
- 笑顔が強すぎる
- 褒め方が大きい
- 手を出すタイミングが早い
こうした微差は、
支援者側には同じような関わりに見えることがあります。
でも、その子にとっては
まったく別物です。
だから、
支援者が変わると崩れる時は、
その微差が負荷になっていないかを見る必要があります。
3. 予測できないこと自体が重いからです
子どもによっては、
「誰が来るか分からない」
「いつもと違う人が関わる」
というだけで不安が上がることがあります。
つまり、
人そのものより、
変化自体が重いことがあります。
特に、
見通しの弱さがある子、
変化に敏感な子、
不安が高い子では、
支援者交代そのものが大きな負荷になることがあります。
4. 一度うまくいかない経験があると、その人自体が警戒の対象になるからです
過去に
- 急かされた
- 重い声かけを受けた
- 無理に通された
- 止められて苦しかった
といった経験があると、
その人が来るだけで緊張が上がることがあります。
これは単なる好き嫌いではなく、
その子なりの学習です。
だから、
支援者が変わると崩れる背景には、
関係の履歴も関わっていることがあります。
なぜ「わがまま」と読むと危ないのか
1. 子どもの不安や負荷を読み落とすからです
わがままと見てしまうと、
その子が何に困っているのかを見るより、
「人を選ばせない」
「慣れさせる」
方向へ行きやすくなります。
でも本当に必要なのは、
何が重いのかを知ることです。
そこを見ずに押し込むと、
支援者交代のたびに崩れが強くなることがあります。
2. チームで共有すべき支援の差が見えなくなるからです
「この子は○○さんじゃないとだめ」
で終わると、
チームとしては進みません。
でも本当は、
○○さんのどこが入りやすいのか、
別の人のどこが重いのかを言語化すれば、
支援は共有できます。
つまり、
問題は人そのものではなく、
再現できる支援の違い
かもしれません。
3. 保護者にも「人に慣れさせましょう」で返しやすくなるからです
支援者が「わがまま」と見ていると、
保護者にも
「いろんな人に慣れた方がいいですね」
「特定の人に偏らないように」
と返しやすくなります。
でも、
慣れの前に必要なのは、
その子が安心できる条件を知ることかもしれません。
順番を間違えると、
慣れさせようとして負荷だけを増やすことになります。
4. 支援者側の調整責任が見えなくなるからです
「この子がわがまま」
と見ると、
支援者側は
自分たちの関わり方の違いを見直しにくくなります。
でも本当は、
- 距離感
- 言葉量
- 待ち方
- 交代時のつなぎ方
- 予告の出し方
など、調整できる要素はたくさんあります。
そこを見ないと、
支援は「子どもを変える話」に寄りすぎます。
児童発達支援・放課後等デイサービスでは、この読み違いがかなり起きやすいです
児童発達支援や放課後等デイサービスでは、
シフト、送迎、配置、勤務の都合で、
支援者が毎日同じとは限りません。
つまり、
支援者交代は日常的に起こります。
そのため、
人が変わると崩れる子は、
現場ではかなり困りやすい存在として見られやすいです。
でも、ふきのこでは
そこを「困った特性」で終わらせたくありません。
むしろ、
その子にとって何が安心の核になっていて、
何がズレると不安定になるのかを知る、
大事な入り口として見ます。
支援全体の土台になる考え方は、
こちらの記事でも詳しく整理しています。
強度行動障害の支援方法|爆発前・爆発中・回復期の具体対応と判断設計
ふきのこでは、「誰なら大丈夫か」を「何なら大丈夫か」に変えていきます
ふきのこが目指しているのは、
「この子はこの人じゃないとだめ」
で止まることではありません。
そこから一歩進めて、
- どういう声量なら入りやすいか
- どの距離感なら安心しやすいか
- どれくらい待つと動けるか
- 交代時にどんな予告が必要か
- どの手順なら崩れにくいか
を共有していきます。
つまり、
「誰なら大丈夫か」を、
チームで使える
何なら大丈夫か
に変えていきます。
ここまで進めると、
支援者交代があっても、
完全に同じではなくても、
少しずつその子が崩れにくいチームに近づいていきます。
ふきのこの支援観では、「人への反応」に見えるものほど丁寧に読みます
このシリーズでは、
表面に見えている行動と、
実際に内側で起きていることがズレる場面を扱っています。
「支援者が変わると崩れる」も、その一つです。
人を選んでいる、
甘えている、
わがまま。
こうした読み方は、
時に子どもの不安や支援条件のズレを見えなくします。
だから、ふきのこでは
支援者が変わった時ほど、
本当に起きているのが好き嫌いなのか、
不安なのか、
安心条件の崩れなのかを見ます。
支援観シリーズ一覧は、こちらから見られます。
ふきのこの支援観
ふきのこで大切にしていること
ふきのこでは、
支援者が変わると崩れる子を、
そのままわがままとは見ません。
そうではなく、
- 何が安心の支えになっていたのか
- どの違いが負荷になったのか
- どこで不安が上がったのか
- チームで共有できる条件は何か
- どうすれば少しずつ広げられるか
を見ます。
大切なのは、
その子を押して慣れさせることではなく、
その子が安心できる条件をチームで言葉にし、少しずつ支えを広げていくこと
です。
ふきのこの支援や事業所の概要については、
こちらをご覧ください。
ふきのこについて
まとめ
支援者が変わると崩れる子は、わがままでそうなっているとは限りません。
そこには、
安心の土台、人との関係、支援条件の違いが強く関わっていることがあります。
大切なのは、
「人を選んでいる」で終わることではなく、
何が違うと重くなり、何があると安心しやすいのかを丁寧に見ること
です。
その視点があると、
支援は特定の人に依存するものではなく、
その子が少しずつ安心を広げていけるものへ変わっていきます。
強度行動障害の支援方法を体系的にまとめています

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