
▶ 強度行動障害の支援方法
突然噛みつく行動|感覚過負荷が引き起こした強度行動障害の支援再設計ケース(小学3年)
本ケースは、小学3年生の児童に見られた突然の噛みつき行動についての事例です。行動は突発的に見えていましたが、観察と分析を重ねることで発生条件が明らかになり、支援方法の再設計につながりました。
ケース概要
- 小学3年生
- 自閉スペクトラム症
- 重度知的障害
- 強度行動障害
- 発語なし
活動中、突然近くにいる児童や支援者の腕に噛みつく行動が見られていました。噛む力が強く、歯型が残ることもあり、安全管理上大きな課題となっていました。
行動が起きた場面
行動は主に活動の切り替え場面で発生していました。
ある日の自由遊びの時間、児童はブロック遊びに集中していました。床に座り、同じ形のブロックを並べながら長時間遊び続けていました。
活動時間が終了し、職員が「お片付けの時間だよ」と声をかけると、周囲の児童はブロックを片付け始めました。
対象児童はブロックを握ったまま動きが止まり、床を見つめたまま数秒間静止していました。
その直後、近くにいた支援者の腕に突然噛みつく行動が見られました。
行動は短時間で終わるものの、強い力で噛むため、支援者が驚き腕を引く場面が繰り返されていました。
見られた前兆
観察を続けると、行動前には一定の前兆が確認されました。
- 遊びの手が止まる
- 床や手元をじっと見る
- 肩に力が入る
- 呼吸が浅く速くなる
この状態が数秒続いた後、近くの人へ噛みつく行動が起きていました。
初期対応(失敗)
当初は安全確保を優先し、次の対応を行っていました。
- 噛んだらすぐに制止する
- 「噛んだらダメ」と注意する
- 距離を取らせる
- 活動を中断する
しかし、この対応では行動の頻度は減らず、むしろ次の問題が起きました。
- 噛みつきがより突然になる
- 標的が近くの児童へ広がる
- 活動切り替えのたびに緊張が高まる
つまり、行動を止める対応だけでは問題は解決しませんでした。
なぜ支援はうまくいかなかったのか
観察と振り返りを重ねると、問題は活動の切り替えそのものにありました。
対象児童は同じ活動を続けることで安心を得る傾向が強く、突然の活動終了は大きな負荷となっていました。
また、遊びを止められた直後に周囲の人が近づくことで、身体的接触への不安も重なっていた可能性がありました。
つまり、行動は
活動終了によるストレスと身体接近への反応
として発生していたと考えられました。
支援の再設計
そこで支援は次のように再設計しました。
- 活動終了5分前に予告カードを提示
- 終了までの残り時間を視覚提示
- 片付けを段階的に行う
- 終了後は静かな場所へ移動
- 支援者は正面からゆっくり接近
また、前兆が見られた場合は活動切り替えを一時停止し、感覚刺激を減らす対応を行いました。
結果
支援方法の変更後、次の変化が見られました。
- 噛みつき行動の頻度が減少
- 活動切り替えへの抵抗が軽減
- 片付けへの参加が可能になった
完全な消失には至っていませんが、行動の発生条件が明確になり、予防的な支援が可能になりました。
まとめ
強度行動障害の行動は、単なる問題行動として捉えるだけでは理解できないことがあります。
重要なのは、
行動が生まれる環境条件を分析すること
です。
本ケースでは、活動切り替えの方法を調整することで、児童の負荷を下げる支援につながりました。
関連リンク
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