その行動、読み違えていませんか?|一度できたことを、もうできることと見ないために

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具体的な支援の組み立て方や現場での対応手順については、以下の専門ページで詳しく解説しています。
強度行動障害の支援方法

その行動、読み違えていませんか?|一度できたことを、もうできることと見ないために

子どもの支援をしていると、
それまで難しかったことが、
ある日ふっと通る場面があります。

たとえば、

  • 初めて自分から活動に入れた
  • 嫌がっていた流れを一回通せた
  • 声かけで切り替えられた
  • トイレ誘導に応じられた
  • 集団の中で最後までいられた

こういう場面に出会うと、
大人はどうしても嬉しくなります。

それは自然です。
一度でも通ったことには確かに意味がありますし、
そこに希望が生まれるのも当然です。

ですが、ふきのこでは、一度できたことを、そのまま「もうできること」とは見ません。

なぜなら、
一回通ったことと、
その子の中で安定して使える力になったことは、
同じではないからです。

子どもによっては、
たまたま条件がそろって通っただけのことがあります。
かなり無理をして通しただけのことがあります。
支援者の細かい支え込みで成り立っていただけのことがあります。

つまり、
「できた」のではなく、
その時だけ何とか通った
のかもしれません。

だから、この見え方もかなり読み違えやすい。
そして読み違えるほど、
支援はその子にとってまだ重いものを、
“もうできること”として前提にしやすくなります。

一回できたことには意味があります。でも、それだけではまだ分からないことが多いです

ふきのこは、
一回できたことを軽く見るわけではありません。

むしろ、
その一回には大きな意味があります。

今まで全く入れなかった活動に一歩入れた。
初めて切り替えが通った。
初めてトイレの流れに応じられた。

こういう一回は、
その子にとっても、
支援者にとっても、
保護者にとっても大切です。

ただ、問題はその後です。

一回通ったことを、
すぐに

  • 定着したこと
  • もうできること
  • 次回も同じように求めていいこと

として扱い始めると、
支援は急に重くなります。

つまり、
一回の成功を喜ぶことと、
一回の成功で支援の前提を変えることは、
全く別です。

ふきのこが見ているのは「できた事実」より「何でできたか」です

ふきのこでは、
子どもが一度何かを通せた時、
まず
「もう大丈夫そう」
とは考えません。

それより先に、

  • どんな条件がそろっていたのか
  • 誰が関わっていたのか
  • どんな支えが入っていたのか
  • その時の表情はどうだったか
  • 終わった後に反動はなかったか
  • 本人に無理はなかったか

を見ます。

たとえば、
トイレ誘導に一回応じられたとしても、

  • たまたまタイミングが合ったのか
  • その前に十分落ち着けていたのか
  • 支援者の言い方がちょうど合っていたのか
  • 身体不快が少ない日だったのか

で意味は全く変わります。

つまり、
一回できたことを支援に活かすには、
成功の条件を分解して見ること
が必要です。

なぜ子どもは「一度できたように見える」のか

1. たまたま条件がそろっていたからです

子どもの行動は、
その日の体調、疲れ、環境、人の配置、流れの分かりやすさなどでかなり変わります。

だから、
一度通ったことが、
本当に力として積み上がったのか、
たまたま条件が良かっただけなのかは、
一回では分かりません。

外からは「できた」に見えても、
実際には
通りやすい日が重なっただけ
かもしれません。

2. 無理をして通した一回かもしれないからです

見た目にはできていても、
本人はかなり緊張していたり、
頑張りすぎていたりすることがあります。

表情が固い。
視線が止まる。
終わった後に一気に崩れる。
帰宅後に反動が出る。

こうしたことがあるなら、
その一回は“定着”ではなく、
かなり負荷の高い通過
だったのかもしれません。

3. 支援者の細かい支えで成り立っていたからです

一回できた場面の中には、
支援者がかなり丁寧に支えていたケースもあります。

たとえば、

  • タイミングを細かく合わせていた
  • 声かけ量をかなり調整していた
  • 人や刺激を減らしていた
  • 流れを細かく区切っていた

こうした条件があって初めて通ったなら、
それは「もう一人でできる」ではありません。

むしろ、
どういう支えがあれば通れるのかが見えた
という意味の方が大きいです。

4. 一回できたことが、まだ“条件つきで通る段階”だからです

子どもの力は、
急に完成するわけではありません。

最初は、
ある条件では通る。
でも条件が少し変わると止まる。
また別の支えがあると通る。

こういう段階がかなりあります。

この時に
「一回できた=もうできる」
と読むと、
まだ不安定なものを、
完成した力のように扱ってしまいます。

なぜ「一度できた」を「もうできる」と読むと危ないのか

1. 次も同じように求めてしまうからです

一度できたことは、
大人の記憶に強く残ります。

だから次に同じ場面が来ると、
どうしても
「前回できたから今回もいける」
と考えやすくなります。

でも、本人の中では、
前回はぎりぎりで通しただけかもしれません。

そこを見ないと、
前回より早く崩れたり、
より強い拒否が出たりしやすくなります。

2. できなかった時に、後退のように見られやすいからです

一回できたことを基準にすると、
次にできなかった時、
どうしても
「前はできたのに」
という見方が生まれます。

でも実際には、
後退ではなく、
まだ条件つきでしか通っていないだけかもしれません。

ここを読み違えると、
本人も支援者も
「できなくなった」
という苦しい受け取り方をしやすくなります。

3. 無理を“成長”として積み上げやすいからです

一回通ったことをそのまま前向きに意味づけると、
本当はかなりの無理があった一回を、
「成長した証拠」
として積み上げやすくなります。

すると、
支援はその子に合う条件を整える方向ではなく、
前回の成功を再現させる方向へ寄りやすくなります。

4. 支援の見直しが止まるからです

一回できたことを
「もうできる」
と読んでしまうと、
そこに至った条件を細かく見なくなります。

でも本当は、
何が支えになっていたのか、
どの支えはまだ必要なのか、
何を減らすと崩れるのかを見続ける必要があります。

そこを止めると、
支援は急に雑になります。

児童発達支援・放課後等デイサービスでは、この読み違いがかなり起きやすいです

児童発達支援や放課後等デイサービスでは、
どうしても
前向きな変化を拾いたい気持ちがあります。

それ自体は悪いことではありません。
小さな変化に気づくことは大事です。

でも、その一方で、
一回できたことが
思った以上に早く
「できること」
として扱われやすいです。

たとえば、

  • 前回は座れたから今回も座れるはず
  • 一度トイレで成功したからもういけるはず
  • 活動に入れたから次も同じように参加できるはず

といった見方です。

でも、ふきのこでは
そこを急ぎません。

なぜなら、
本当に見たいのは
一回の成功ではなく、
どういう条件ならその子が繰り返し通りやすいか
だからです。

支援全体の土台になる考え方は、
こちらの記事でも詳しく整理しています。
強度行動障害の支援方法|爆発前・爆発中・回復期の具体対応と判断設計

ふきのこでは、「一回できた」をゴールではなく手がかりとして見ます

ふきのこにとって、
一回できたことはとても大切です。

でも、それは
「もう安心」
のサインではありません。

むしろ、

  • 何があれば通れるのか
  • どこまでなら無理がないのか
  • 何を減らすと入りやすいのか
  • 次に何を再現したいのか

を知るための手がかりです。

つまり、
一回できたことを
成果として固定するより、
支援の条件を知る材料として使う
ことを大切にしています。

ふきのこの支援観では、「できた」に見えるものほど丁寧に読みます

このシリーズでは、
表面に見えている行動と、
実際に内側で起きていることがズレる場面を扱っています。

「一度できたように見える」も、その一つです。

できたからもう大丈夫、
通ったから定着、
一回成功したから次もいける。

こうした読み方は、
時に子どもの無理や条件差を見えなくします。

だから、ふきのこでは
一回できた時ほど、
本当に起きているのが定着なのか、
条件つきの通過なのか、
無理の上の成功なのかを見ます。

支援観シリーズ一覧は、こちらから見られます。
ふきのこの支援観

ふきのこで大切にしていること

ふきのこでは、
一度できたことを、
そのままもうできることとは見ません。

そうではなく、

  • 何があって通れたのか
  • どんな支えが必要だったのか
  • 本人に無理はなかったか
  • 終わった後に反動はないか
  • 次に再現したい条件は何か

を見ます。

大切なのは、
一回の成功を急いで評価することではなく、
その一回から、その子が通りやすい条件を丁寧に見つけていくこと
です。

ふきのこの支援や事業所の概要については、
こちらをご覧ください。
ふきのこについて

まとめ

一度できたことは、もうできるようになったことと同じではありません。

その一回の中には、
たまたま通った条件、強い支え、本人の無理が含まれていることがあります。

大切なのは、
「できたからもう大丈夫」と急ぐことではなく、
何があればその子が通れるのかを、一回の成功から丁寧に読み取ること
です。

その視点があると、
支援は結果を急いで固定するものではなく、
その子に合う条件を少しずつ育てていくものへ変わっていきます。

       強度行動障害の支援方法を体系的にまとめています

       ▶ 強度行動障害の支援方法【構造・前兆・実践まで解説】        

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