
▶ 強度行動障害の支援方法
見通しを作っても崩れるときに見直すこと|予定提示だけでは足りない子への支援方法
強度行動障害のある子どもへの支援では、「見通しを作ることが大事」とよく言われます。
予定を示す。
次に何をするか伝える。
終わりを分かるようにする。
写真や絵カードを使う。
順番を見える形にする。
こうした工夫は、実際にとても大事です。
見通しがあることで、不安が下がる子もいます。
動き出しやすくなる子もいます。
切り替えやすくなる子もいます。
ただ一方で、見通しを作っているのに崩れる子もいます。
予定は示している。
次の流れも伝えている。
それでも固まる。
拒否する。
急に不安定になる。
崩れてしまう。
このときに、「見通しがまだ足りないのかな」とだけ考えると、支援は浅くなります。
大事なのは、見通しを出しているかどうかではなく、その子にとって本当に支えになる見通しになっているかを見直すことです。
見通しは「出せば効く」ものではない
まず大事なのは、見通しは出せば自動的に効くものではないということです。
予定を見せた。
順番を伝えた。
写真を置いた。
だから大丈夫。
そう単純にはいかないことがあります。
なぜなら、見通しが支えになるためには、
- その子が理解しやすい形であること
- 今の状態で受け取れる量であること
- 実際の流れとずれていないこと
- 不安の中心に合っていること
こうした条件が必要だからです。
つまり問題は、「見通しがあるかないか」だけではありません。
何を、どの形で、どの順序で、どれだけ渡しているかが重要です。
どんな場面で「見通しがあるのに崩れる」が起きやすいのか
予定提示をしていても崩れやすい場面には、いくつかの特徴があります。
たとえば、
- 予定は分かっていても、その活動自体への不安が強い場面
- 順番は見えていても、最初の一歩が曖昧な場面
- 見通しはあるが、変更が急に入る場面
- 予定の情報量が多すぎる場面
- 「何をするか」は分かっても、「どう始めるか」が分からない場面
- 見通しより、人・場所・刺激の負荷のほうが強い場面
こうしたときは、見通しだけでは支えきれないことがあります。
つまり、「予定を見せれば落ち着く」というより、予定以外の重さが勝っているのです。
子どもの中で何が起きているのか
見通しがあっても崩れる子の中では、いくつかのことが起きています。
予定は分かる。
でも、その予定が嫌だ。
順番は見える。
でも、その先の負荷が重い。
流れは分かる。
でも、どう始めればいいか分からない。
写真は見える。
でも、今の不安がそれを上回っている。
つまり、その子は見通しを理解できていないとは限りません。
むしろ、分かっているからこそ不安が上がることさえあります。
ここを見落として、「もっと分かりやすく示そう」と情報だけ増やすと、かえって重くなることがあります。
支援者がやりがちなずれ
この場面で支援者がやりがちなのは、「崩れるなら予定提示をもっと増やそう」と考えることです。
カードを増やす。
説明を増やす。
順番を細かくする。
何度も確認する。
分かったかを聞き続ける。
もちろん、それで落ち着く子もいます。
でも、すでに情報処理が重い子や、不安の中心が別のところにある子には逆効果になりやすいです。
見通しを足しているつもりが、実際には刺激や要求を足しているだけになることがあるからです。
ここで必要なのは、「もっと見通しを出す」ではなく、なぜ見通しが支えになっていないのかを見直すことです。
何を見て判断するか
この場面で見るべきなのは、単に予定提示の有無ではありません。
本当に見たいのは、次のようなことです。
- その子は予定そのものを理解できているのか
- 見通しの量が多すぎないか
- 何をするかは分かっても、どう始めるかが曖昧ではないか
- 予定より、人・場所・刺激の負荷が勝っていないか
- 変更が入ったときの支えが足りていないのではないか
- その子が本当に不安に思っている点に触れられているか
ここが見えると、「見通しが足りない」のではなく、見通しの焦点がずれていることがあります。
支援方法① 予定ではなく「最初の一歩」を具体化する
見通しを作っても崩れる子の中には、流れ全体より、最初の一歩が曖昧で止まっている子がいます。
たとえば、
- 次は制作です
- 次は片づけです
- 次はおやつです
ここまでは分かっている。
でも、「で、最初に何をするのか」が曖昧で止まることがあります。
その場合は、
- まず椅子に座る
- この箱を持つ
- 一個だけ入れる
- ここに置く
このように、始まりをもっと小さく具体化したほうが入りやすくなります。
予定を見せるだけでなく、最初の一手まで見えるようにすることが必要です。
支援方法② 見通しの量を減らす
支援者はつい、「先が分かった方が安心だろう」と思って、先の流れまで全部見せたくなります。
でも子どもによっては、それが逆に重くなります。
先の予定が多い。
終わるまでの長さが見えすぎる。
嫌な活動まで最初から目に入る。
変更が起きたときのズレも大きく感じる。
こういう子には、長い見通しより、今必要な分だけ短く出すほうが有効なことがあります。
見通しは多ければいいのではありません。
その子が保てる量であることが大事です。
支援方法③ 予定提示より先に不安の原因を下げる
見通しがあっても崩れるときは、そもそも不安の中心が予定ではないことがあります。
場所がしんどい。
人が多い。
声が重い。
関わる大人が変わる。
その活動自体に嫌な経験がある。
こうした場合、予定だけ整えても足りません。
必要なのは、
- 刺激を減らす
- 距離を調整する
- 関わる人を絞る
- 要求の量を下げる
- まず保てる場所に戻す
こうした調整です。
つまり、見通しより先に、不安の土台を下げる支援が必要なことがあります。
支援方法④ 変更があるなら「何が同じか」も示す
見通しを出していても崩れる理由の一つに、変更への弱さがあります。
予定変更があるとき、支援者はつい「今日はこれが変わるよ」と違う部分だけを伝えがちです。
でも子どもにとっては、「変わる」こと自体が大きな不安になります。
そのため、
- 今日は順番だけ違う
- 場所は同じ
- 終わったらいつも通り帰る
- 最初だけ変わる
このように、何が変わらないのかも一緒に示したほうが保ちやすいことがあります。
変更を知らせるだけではなく、支えになる部分を残すことが大切です。
支援方法⑤ 見通しが入っていないのか、見通しだけでは足りないのかを分ける
ここはかなり重要です。
崩れたときに、
- そもそも見通しが理解できていないのか
- 理解はしているが、見通しだけでは支えきれないのか
この二つを分けて考えないと、支援はずれます。
前者なら、形や量や出し方の工夫が必要です。
後者なら、参加の急がせ方、刺激、人、順序、動き出しの支えなど、別の条件を見直す必要があります。
何でも「もっと分かりやすく」で済ませないこと。
ここが支援の分かれ目です。
やってはいけないこと
避けたいのは、次のような関わりです。
- 崩れるたびに予定カードだけ増やす
- 見通しを出しているから大丈夫だと思い込む
- その子の不安の中心を見ずに予定提示で押し切る
- 変更を伝えるだけで支えを残さない
- 予定が分かっているなら動けるはずだと決めつける
こうした関わりは、支援者側には「ちゃんと見通しを出している」という安心を与えます。
でも本人には、「分かっていてもしんどいのに、さらに分からされる」感覚を残しやすいです。
ふきのこで大事にしていること
ふきのこでは、見通しを出しても崩れるときに、「見通しが足りない」とすぐ決めません。
本当に足りないのは予定なのか。
最初の一歩なのか。
変更への支えなのか。
刺激調整なのか。
不安そのものを下げる条件なのか。
そこを見直します。
子どもに必要なのは、予定をたくさん見せられることではありません。
その子にとって、本当に支えになる見通しを渡してもらうことです。
見通しを作っても崩れるときに大切なのは、予定提示そのものを増やすことではなく、見通しが支えにならない理由を見抜いて、別の条件まで含めて整えることだと考えています。
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