
子どもの癇癪や他害はなぜ起きる?落ち着かせ方の順番と支援の考え方
「急に崩れる」「何度言ってもやめない」「叱ると余計にひどくなる」——。
子どもの癇癪や他害に向き合うとき、大人は正解が分からなくなります。
ですが多くの場合、“対応の仕方”ではなく“順番”がずれていることが原因です。
この記事では、ふきのこが大切にしている支援の順番(構造)を、親御さんにも分かる形で整理します。
なぜ注意しても落ち着かないのか
強い不安や怒りの中では、脳は“学ぶ状態”ではありません。
たとえば、次のような状態が重なると、子どもは一気に余裕を失います。
- 予測できない変化(見通しがない)
- 強すぎる音や刺激(感覚の過敏さ)
- 空腹や疲労(体の限界)
- 言葉の理解が追いつかない状況(要求が高すぎる)
この状態で「やめなさい」「理由を言いなさい」と言っても届きません。
まず必要なのは指導ではなく、安全と安心です。
支援には5つの段階があります
ふきのこでは支援を次の順番で考えています。
- 安全を守る
- 落ち着きをつくる
- 伝え方を育てる
- 成功体験を積む
- 再発を減らす(予防)
この順番を守るだけで、支援のブレが減り、子どもが安心しやすくなります。
逆に、この順番を飛ばすと、叱責や対立が増え、行動は強くなりやすいです。
「実際に、どんな支援をしているの?」という方は、支援の全体像をこちらにまとめています。
▶︎ ふきのこの支援内容
① まず安全を守る
叩いている最中に理由を聞きません。まずは安全を確保します。
叱責よりも先に、安全。ここを飛ばすと支援は対立になります。
- 距離をとる(大人・他児の安全を確保)
- 物をどける(投げる・壊すリスクを減らす)
- 刺激を減らす(音・視覚刺激・人の密度を下げる)
② 落ち着きをつくる
安全が確保できたら、次は安心です。ふきのこで大切にしているのは静かな介入です。
- 声を落とす
- 言葉を増やしすぎない(短く・一定)
- 写真や見通しを提示する(「次に何が起きるか」を見せる)
- 距離を整える(近すぎない・遠すぎない)
安心は説得ではなく、環境で作ります。落ち着いていない段階で「約束」「反省」を求めない。
これが支援の土台です。
【具体例①】ロープくぐりで崩れそうになった場面
低いロープをくぐる活動で、最初は笑顔だった子が途中で動きを止め、表情が固くなったことがありました。
このとき私たちは「進ませる」より先に、順番に沿って環境を整えました。
- 無理に進ませない(安全の確保)
- 声を落とす(刺激を下げる)
- ロープの高さをわずかに調整(負荷の最適化)
- 応援の声の量を整える(安心を上げる)
すると再び動き出し、自分でくぐることができました。
「頑張らせた」のではなく、安心を整えただけです。
③ 伝え方を育てる
落ち着いてから初めて、育成に入ります。
行動は「悪い」のではなく、目的(伝えていること)がある場合が多いからです。
- 叩く → 「貸して」「やめて」を伝える練習
- 泣く → 「やめたい」「手伝って」を示す
- クレーン行動 → 指差し・写真・カードで伝える
目的を満たす、より安全な方法に置き換える。ここが支援の本質です。
【具体例②】中身を確認する行動
ある子は、おやつを半分に割って中を確認してから食べます。
一見「こだわり」に見えますが、実際は不安を減らす確認行動であることが多いです。
そこで事前に中身を見せたり、写真で見通しをつくると、確認の時間が短くなりました。
叱るのではなく、背景を読む。これも構造化支援の一つです。
④ 成功体験を積む
できた瞬間に、すぐ反応します。遅れると学習になりません。
- すぐ褒める
- すぐ認める
- すぐ叶える(可能な範囲で)
「こうすれば伝わる」という経験は、自己効力感を育てます。
そして自己効力感は、次の落ち着きにつながります。
⑤ 崩れを予防する
本当に重要なのは予防です。強い癇癪や他害ほど、事後対応だけでは追いつきません。
ふきのこでは、次のような要因を常に観察します。
- 空腹・睡眠・体調(体の余裕)
- 急な予定変更(見通しの崩れ)
- 音量・刺激量(感覚負荷)
- 人の密度・距離(対人負荷)
多くの崩れには前兆があります。眉が固い、動きが止まる、視線が逸れる——。
小さなサインを読むことで、大きな崩れを防げます。
もっと体系的に読みたい方は、関連テーマをまとめたポータルも用意しています。
▶︎ 強度行動障害 支援ポータル
よくある間違い
- 崩れている最中に説得する(学べる状態ではない)
- 理由を問い詰める(さらに負荷が上がる)
- 一貫性のない対応(予測不安が強くなる)
- 比較で動かそうとする(対立が深まる)
「叱るか・叱らないか」ではなく、順番を守れているかが支援の質を決めます。
行動が強く出る場面(爆発前・爆発中・回復期)まで含めた具体的な対応は、こちらで整理しています。
▶︎ 強度行動障害の支援方法
強度行動障害と支援の考え方
強い他害や自傷がある場合も、基本構造は同じです。
違うのは「強度」だけで、支援の順番は変わりません。
安全 → 安定 → 代替 → 強化 → 予防
強度行動障害のように行動が強く出る場合の支援は、場面別(爆発前・爆発中・回復期)で組み立てると安定します。
▶︎ 強度行動障害の支援方法(具体対応と判断設計)
ふきのこの支援の特徴
ふきのこでは、次を大切にしています。
- 強い叱責に頼らない
- 先に環境を動かす
- 崩れの前兆を読む
- 静かな介入を大切にする
そして全職員が「支援の順番」を共有しています。活動は偶然ではなく設計です。
よくある質問
Q. 癇癪はわざとやっているのでしょうか?
多くの場合は違います。感情や感覚が処理しきれない状態で起きていることが多いです。
Q. 他害は厳しく叱るべきですか?
安全確保は必要ですが、叱責よりもまず安心を整えることが重要です。
落ち着いてから「伝え方」を育てることで再発が減ります。
Q. 放課後等デイサービスでは何をしていますか?
安全確保、情緒安定、代替行動形成、成功体験、予防設計を順番に行います。
活動の中身も「順番」を守るように設計します。
Q. 強度行動障害の場合も同じ支援方法ですか?
基本構造は同じです。強度が高いほど、予防設計(睡眠・空腹・刺激量・見通しの調整など)の比重が大きくなります。
ふきのこの支援の全体像(理念・支援内容・利用案内)は、こちらにまとめています。
▶︎ ふきのこの支援内容
最後に
支援は感覚ではなく、順番です。子どもを変えるより、まず環境を整える。
叱る前に、安全と安心をつくる。この順番を守るだけで、子どもは大きく変わります。
「今の家庭や園・学校の状況に合わせて、一緒に支援の設計を考えたい」——そう感じた方は、こちらをご覧ください。
▶︎ ふきのこの支援内容はこちら
